財閥御曹司は、深窓令嬢に一途な恋情で愛し尽くしたい。
お見合い
お見合い話はトントン拍子に進み、もう二週間経った。
お見合いの場所は、都内にある高級日本料理店と提案された。そこは、昔から華族や旧財閥家の人たちの御用達の店らしい。
約束の時間は夜の十八時なのでそれより少し早めに到着できるように出発する。専属運転手の運転で旦那様と奥様と一緒に店に向かった。
日本料理店での食事なので私は着物だ。まぁ、露出度が高いドレスやワンピースは私……着られないからな。
手描き京友禅の染匠のものでクリーム系の優しい地色に七宝や笹、梅、鶴と柄が施されていていかにも高そうな代物で、着てるだけで緊張してしまう。ため息ばかり出てしまう。
「愛百合、粗相のないようにな。必ず、この縁談は成功させなさい」
「……はい、分かっています」
「今日は、旦那様ではなくお父様、優未のことはお母様と呼びなさい」
優未というのは奥様の名前だ。まさか、『お父様』『お母様』呼びが許されるだなんて……そう思って、奥様の方を見ると屈辱だと言いそうな表情をしていた。めちゃくちゃ嫌そう。