財閥御曹司は、深窓令嬢に一途な恋情で愛し尽くしたい。



 そうして、廊下を進むと畳が敷かれた土壁仕上げでとても和を感じさせる部屋が並んでいる。仲居さんは奥にある【小町藤】という個室に案内してくださり中に入ると、和の雰囲気を感じられる空間で床の間には掛け軸と四季の花が飾られ話の設えに忠実な構成だ。少し上を見ると欄間にはデザイン性の高い精緻な透かし彫りが施されているし襖は黄金に輝いているため圧倒的な存在感がありラグジュアリー満載の部屋だ。

 私たちは上座に座ると相手が来るのを待つ。緊張で心臓の音がドクドクと聞こえるようだ。

 心配事を抱きながら俯き笑顔を作っていると襖が開いた。入って来たのは、旦那様と同年代ぽいがスマートでダンディーな男性だった。これをイケオジと言うのだろうと感じる。
 その後からライトグレーのグレンチェック柄スーツを着こなす男性が入ってきた。まるで歩くマネキンかと思うようにスラっとした体に甘く端正な顔立ちを持ち大人の色気を感じさせる艶やかな黒髪からはキリリとした印象の瞳を覗かせている。それにオーラがあり、とても美男だ。

 こんな美青年が、私の婚約者になる人なの?


「遅れてすみません」

「いいえ、とんでもないです。御子柴様……この度はご了承いただきありがとうございます」

「こちらこそ、槻折様からの申し出ありがたく思っています。今日、妻は体調が悪く欠席となりますがよろしくお願いします」


 まぁ、この二人の言いたいのはお互い利益や繁栄のために縁付くことができてうれしいってことだ。わかりやすいなぁ……


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