公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。
第六章 アルーグ編
思い出すのは(アルーグ視点)
思い出すのは、幼きあの日々のことである。彼女がいなくなったことで、俺の心には穴が開いた。大きな穴が開いたのだ。
しかし、家の事情なら仕方ない。そう思っていた俺は、とある違和感に気づいてしまった。父親の様子がおかしいことに、気づいてしまったのだ。
「……ふっ」
そこまで思い出してから、俺はゆっくりと目を覚ました。
最近は、こんな夢ばかり見る。ルネリアがこの公爵家に来てからは、ずっとそうだ。
彼女にあの人の面影を見ているのだろうか。だとしたら、それは愚かなものである。
「それに関しては、既に決着をつけたはずだというのに……」
俺の心に空いた穴は、既に埋まっているはずだ。少なくとも、自分ではそう思っている。もうその思いは、断ち切ったはずだ。
それなのに、まだあの夢を見る。それは、どういうことなのだろうか。
◇◇◇
俺の目の前には、父親がいる。ラディーグ・ラーデイン、それがその男の名前だ。
彼は、愚かな男である。酔っ払ってメイドに手を出して、彼女との間に子供を作った無責任な貴族だ。
「それで、話とは何かな?」
「あなたには、そろそろこの公爵家から出て行ってもらいたい」
「出て行くか……」
俺は、父親のことを憎んでいる。しかし、それは私怨だ。それによって、父親を排斥しようとは思わない。
だが、この父が公爵家の当主であるという事実は、その私怨を抜きにしても放っておけることではないのだ。
このような男が、当主であると他の貴族から舐められる。それは、ラーデイン公爵家として許容できないことなのだ。
故に、彼には出て行ってもらう。それは、今の俺達の心情的にも、丁度いいことだ。
「別荘を用意してあります。そこで、暮せばいいでしょう。生活に不自由はないように手配します」
「そうか……そうだね」
俺は、父親に対して淡々と事実を告げる。
これ以上、この男が公爵家に関わって欲しくはない。はっきりと言って、彼はもう邪魔者なのだ。
別荘で、一人で隠居してもらう。それが、一番いい形である。体裁的にも、心情的にも。
「すまないね、アルーグ。君には、迷惑をかけてしまう」
「……」
「君は随分と立派になったものだ。私の情けない背中を見ていたというのに、ここまで成長してくれるなんて、私は嬉しいよ」
「そうですか」
父の言葉に、俺は冷たく声を出すだけだった。
いつからだろうか。彼の言葉にこのような反応を示すようになったのは。
いや、それは考えるまでもない。あの人がいなくなった日から、俺は父に対して冷たい態度を取るようになっていたのだ。
それは、憎しみや失望からくるものだった。俺はあの日から、父親を父親だと思えなくなっていたのだ。
しかし、家の事情なら仕方ない。そう思っていた俺は、とある違和感に気づいてしまった。父親の様子がおかしいことに、気づいてしまったのだ。
「……ふっ」
そこまで思い出してから、俺はゆっくりと目を覚ました。
最近は、こんな夢ばかり見る。ルネリアがこの公爵家に来てからは、ずっとそうだ。
彼女にあの人の面影を見ているのだろうか。だとしたら、それは愚かなものである。
「それに関しては、既に決着をつけたはずだというのに……」
俺の心に空いた穴は、既に埋まっているはずだ。少なくとも、自分ではそう思っている。もうその思いは、断ち切ったはずだ。
それなのに、まだあの夢を見る。それは、どういうことなのだろうか。
◇◇◇
俺の目の前には、父親がいる。ラディーグ・ラーデイン、それがその男の名前だ。
彼は、愚かな男である。酔っ払ってメイドに手を出して、彼女との間に子供を作った無責任な貴族だ。
「それで、話とは何かな?」
「あなたには、そろそろこの公爵家から出て行ってもらいたい」
「出て行くか……」
俺は、父親のことを憎んでいる。しかし、それは私怨だ。それによって、父親を排斥しようとは思わない。
だが、この父が公爵家の当主であるという事実は、その私怨を抜きにしても放っておけることではないのだ。
このような男が、当主であると他の貴族から舐められる。それは、ラーデイン公爵家として許容できないことなのだ。
故に、彼には出て行ってもらう。それは、今の俺達の心情的にも、丁度いいことだ。
「別荘を用意してあります。そこで、暮せばいいでしょう。生活に不自由はないように手配します」
「そうか……そうだね」
俺は、父親に対して淡々と事実を告げる。
これ以上、この男が公爵家に関わって欲しくはない。はっきりと言って、彼はもう邪魔者なのだ。
別荘で、一人で隠居してもらう。それが、一番いい形である。体裁的にも、心情的にも。
「すまないね、アルーグ。君には、迷惑をかけてしまう」
「……」
「君は随分と立派になったものだ。私の情けない背中を見ていたというのに、ここまで成長してくれるなんて、私は嬉しいよ」
「そうですか」
父の言葉に、俺は冷たく声を出すだけだった。
いつからだろうか。彼の言葉にこのような反応を示すようになったのは。
いや、それは考えるまでもない。あの人がいなくなった日から、俺は父に対して冷たい態度を取るようになっていたのだ。
それは、憎しみや失望からくるものだった。俺はあの日から、父親を父親だと思えなくなっていたのだ。