公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。
不条理な世界(アルーグ視点)
世の中というものは、不条理なものだ。彼女からの手紙を読んで、俺はそんな感想を抱いていた。
その手紙に記されていたことは、大きく分けると二つだ。
一つは、セリネアの命が、もう長くはないこと。彼女は、病に侵されているそうだ。
もう一つは、彼女の娘ルネリアのことである。彼女を守って欲しい。その旨が、手紙には記されている。
「ルネリアを公爵家に……か」
セリネアの望みは、ルネリアを公爵家に加えることだった。色々と考えた結果、それが一番いいと考えたようである。
本当にそれでいいのかどうか、俺は考えようとした。だが、その思考を俺は切り捨てる。
ルネリアの親であるセリネアがそう考えたのだ。それをこの俺風情が捻じ曲げる必要などないだろう。
故に、俺は手紙の指示通りにすると決めた。セリネアは、父上と話がしたいそうだ。まずは、その場を設けるとしよう。
「……結局、俺は何をしていたのだろうな」
彼女への返信を書きながら、俺はゆっくりとそう呟いていた。
俺のしてきたことは、無駄だったのだ。それを理解して、俺はなんともいえない気分になるのだった。
◇◇◇
しばらくして、俺の元にセリネアの訃報が届いてきた。
村で話してから、何度か手紙のやり取りは交わしたものの、彼女とはあれっきり会っていない。
彼女の望みは、娘と残された時間を過ごすことだった。そこに、俺が介入するべき時などなかったのである。
「アルーグ様」
「む? どうかしたのか?」
「いえ、先程からぼうっとされてしましたから」
「そうか……それは、すまなかったな」
訃報が届いてから間もなくして、俺はカーティアと会っていた。
それは、元々予定していた会合だ。これからのことを、少し話し合いたかったため、俺は彼女を呼んだのである。
それなのに、俺はぼうっとしていたようだ。それはなんとも、情けない話だ。
「……先程伝えた通り、このラーデイン公爵家は隠し子であるルネリアを迎えに行く。お前には、迷惑をかけてしまうな」
「いえ」
「婚約関係の見直しも、考えられるかもしれない案件だ。もしも、そうなったら……」
「アルーグ様、もういいです」
俺の言葉をカーティアは遮ってきた。
これ以上の説明は、どうやら不要らしい。どうなるかは、彼女もよくわかっているということだろうか。
そんなことを思いながら、俺はふと彼女の顔を見た。今までは色々と考えていて、その顔を直視できていなかったのだ。
「……何?」
そして、俺は気付いた。彼女の目から、涙が流れているということに。
その手紙に記されていたことは、大きく分けると二つだ。
一つは、セリネアの命が、もう長くはないこと。彼女は、病に侵されているそうだ。
もう一つは、彼女の娘ルネリアのことである。彼女を守って欲しい。その旨が、手紙には記されている。
「ルネリアを公爵家に……か」
セリネアの望みは、ルネリアを公爵家に加えることだった。色々と考えた結果、それが一番いいと考えたようである。
本当にそれでいいのかどうか、俺は考えようとした。だが、その思考を俺は切り捨てる。
ルネリアの親であるセリネアがそう考えたのだ。それをこの俺風情が捻じ曲げる必要などないだろう。
故に、俺は手紙の指示通りにすると決めた。セリネアは、父上と話がしたいそうだ。まずは、その場を設けるとしよう。
「……結局、俺は何をしていたのだろうな」
彼女への返信を書きながら、俺はゆっくりとそう呟いていた。
俺のしてきたことは、無駄だったのだ。それを理解して、俺はなんともいえない気分になるのだった。
◇◇◇
しばらくして、俺の元にセリネアの訃報が届いてきた。
村で話してから、何度か手紙のやり取りは交わしたものの、彼女とはあれっきり会っていない。
彼女の望みは、娘と残された時間を過ごすことだった。そこに、俺が介入するべき時などなかったのである。
「アルーグ様」
「む? どうかしたのか?」
「いえ、先程からぼうっとされてしましたから」
「そうか……それは、すまなかったな」
訃報が届いてから間もなくして、俺はカーティアと会っていた。
それは、元々予定していた会合だ。これからのことを、少し話し合いたかったため、俺は彼女を呼んだのである。
それなのに、俺はぼうっとしていたようだ。それはなんとも、情けない話だ。
「……先程伝えた通り、このラーデイン公爵家は隠し子であるルネリアを迎えに行く。お前には、迷惑をかけてしまうな」
「いえ」
「婚約関係の見直しも、考えられるかもしれない案件だ。もしも、そうなったら……」
「アルーグ様、もういいです」
俺の言葉をカーティアは遮ってきた。
これ以上の説明は、どうやら不要らしい。どうなるかは、彼女もよくわかっているということだろうか。
そんなことを思いながら、俺はふと彼女の顔を見た。今までは色々と考えていて、その顔を直視できていなかったのだ。
「……何?」
そして、俺は気付いた。彼女の目から、涙が流れているということに。