金髪くんの一途な愛
……まぁ、私も嬉しいからやめてとは言わないけど。
お父さんの視線を感じつつメニューを見ていると
カランカランという音とともに『こんばんはー』という女の人の声が聞こえた。
「いらっしゃーい」
その声に奥から出てきたのは侑真くんじゃなくて女の店員さん。
……この人がマスターさん?
「あゆさ〜ん久しぶり!
今日侑真がいるって聞いたんだけど!」
「いるよ〜。
ちょっと待ってて。
マスターも呼んでくる」
あ、マスターはまた違う人か…。
“あゆさん”と呼ばれた女の店員さんはお客さんに『カウンター席テキトーに座って』と声をかけてから裏に行ってしまった。
それにしても…このお客さん、オーラすご…
っていうか…サングラスに真っ赤な口紅。艶々なロングヘア…タイトなスカートから覗くスラリと伸びた脚。
やり手のキャリアウーマン…まるで社長のような風格。
すごいなと思いながらまたメニューを見てたら
さっきまでずっと私を見てたお父さんが、顔を隠すようにうつむいていた。
………?
あ、元俳優だから
お客さん来たから、バレないように気にしてる?
あんな人、お父さんのことなんて知らなそうだけど…