美魔男の完璧な仕事に心が溺れる


 翔は沙羅が自分の部屋に戻った事を確認してから、唐澤に電話をかけた。数分前に唐澤から電話が入っていたからだ。唐澤はすぐに電話に出てくれた。どういうわけかやけに陽気で、翔は嫌な予感がする。

「翔、大した用事じゃないんだけど」

 翔は天井を眺め軽く息を吐く。

「じゃ、切りますね」

「おい、おい、待てって」

 このやり取りもいつものパターン。翔以外のメンバーからも苦情が出ている。唐澤流の励ましか応援らしいが、いつも大切なミッションの前にこうやって電話がくるのが本当に面倒く迷惑だった。

「今回は翔に伝言もあるんだ。沙羅の父親から」

 翔は一瞬で背筋が伸びた。ミナとウィルから、散々沙羅のお父さんの話を聞かされていたから。

「何ですか?」

「日本的に言ったら、娘に何かあったら命がないと思え!的な事だ」

 翔は鼻で笑った。そんなミスを俺が起こすはずがないと少しだけ苛つきながら。

「念には念を入れて警護をしろ。いいな」

 唐澤はそう言うと、すぐに電話を切った。


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