美魔男の完璧な仕事に心が溺れる
翔はわざわざ電話をかける必要があったのかと、いつも唐澤からの電話の後に思ってしまう。でも、気持ち的には気合が入る。唐澤のチームとして失敗するわけにはいかない。優れた人材が集まるチームの中で、トップでいる事は相当の努力をしないと難しい。
翔はベランダに出て、外の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。今回は特に失敗は許されない。沙羅が危険に晒されると思うだけで、怒りが溢れ出そうになる。まずは、そんな今は必要のない感情を抑え込む事だ。とにかく冷静になる事が一番だった。
「翔?」
沙羅が翔を探している。翔はすぐに中へ戻った。
「どうした?」
沙羅はスマホを持って困った顔をしている。
「龍也君から待ち合わせ場所が決まったって…」
沙羅はそう言って、スマホを翔に差し出した。
翔はスマホを覗き込むと、そこには新宿区の地図が添付されている。指定している店は普通のレストランのようだ。でも、場所は駅からも離れているし、東京の街を知らない女の子を呼び出すには配慮のかけらもない場所だった。