美魔男の完璧な仕事に心が溺れる


 二人は普段着のまま、外へ繰り出した。ホテルの裏側に回るとウッドデッキ調の遊歩道が続いている。

「気持ちいい~~」

 沙羅は潮風を浴びながらそう言った。翔は久しぶりに沙羅の肩を抱き寄せる。東京湾の海はよくよく見ると綺麗じゃない。でも、雲一つない青空が気持ちよさを演出してくれている。
 翔もこの潮風が心の底から気持ちいいと思った。それは、多分、初めて芽生えた感情かもしれない。風が気持ちよくて、空が綺麗? なんてロマンチックなんだろう。翔は苦笑いをした。
 翔は今日のこの先の事には何も触れず、ただ、楽しく散歩をしたかった。沙羅が疲れない程度に、気持ちがリフレッシュできればそれでいい。

「東京の街がこんなに素敵だなんて思わなかった」

「俺も」

翔の返事に沙羅は思わず吹き出して笑った。

「東京の街がこんなに綺麗だったのか~って、この歳になって初めて思った。 
 多分、沙羅マジックにかかっているのかもしれないな。
 俺の中にあるフィルターが変化してる」

「沙羅マジック?」

 翔は沙羅の目を見つめ、また遠くを眺めた。


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