美魔男の完璧な仕事に心が溺れる


 翔はいい加減この仕事に飽きていた。要人の娘とか妻とか愛人とか、この手の依頼はほとんどが翔の仕事となる。

「めちゃくちゃ綺麗だろ?」

「いやいや、そんな事じゃなくて…」

 唐澤には悪いけれど、翔は、今回は他の人間にこの依頼を譲りたいと思っている。今、嵌まっているゲームの方が百倍魅力的だ。

「ここのオーナーの奥さんって人が日本人で、彼女はハーフだから日本語もちゃんと話せるらしい。
 それに、今回はただの観光旅行じゃない。子供の頃に再会を約束した男に会うためだ」

「いいじゃないですか~、いい話だしそんな純愛の邪魔をするのもどうかと思いますけど」

 翔は伸びすぎた前髪を払いながらそう言った。そして、唐澤の背後にある窓の方へ移動する。

「その男っていうのが怪しいらしくて、両親が心配してるわけさ。
 今回は遠くからの見守りじゃなくて、完全に一緒に行動してもらいたいらしい。
 彼女もそれは承諾しているとの事。
 ま、そうじゃないと親がこの旅行にOKを出さなかったんだろうな」

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