魔力なし悪役令嬢の"婚約破棄"後は、楽しい魔法と美味しいご飯があふれている。

ルーのお弁当作り

 子犬ちゃんの飼い主は相変わらず見つからないけど。何事も無く数日が経ち、ガリタ食堂の定休日がきた。
 
 早朝、5時。フクロウの福ちゃんと日課の挨拶も終わり。まだ眠そうな子犬ちゃんを部屋に残して、私はエプロンをつけ、ガリタ食堂の厨房を借りて料理をはじめる。
  
(えーっと唐揚げと、照り焼きチキンを作って……甘めの卵焼きと)

 作る順番を考えながら、冷やし庫からきのう閉店に仕込んだ鶏肉を取りだした。

「まずは、唐揚げから作ろう」

 お米はきたすぐに炊いた、あと20分くらいでたける。私は魔導コンロに火をつけて、ニンニクと生姜、醤油、塩胡椒で下味をつけた鶏肉に、片栗粉をまぶしてカラリと揚げる。


 厨房なかで揚げ物のあがる音がきこえ、カリカリ、キツネ色に上がった揚げたての唐揚げの香りがただよう。

「いい匂い、我慢できない」

 美味しそうな、揚げたての唐揚げを一つ摘み。
 次に甘辛ダレに漬け込んでおいたチキンを取りだして、タレを回しかけながらフライパンでこんがり焼けばーー照り焼きチキンの完成!

 卵は甘めに味付けして卵焼きに。茹でたインゲンと、細切り人参で胡麻和えも作った。

 フフフン~鼻歌を歌いながら。

 あとは女将さんに借りたお弁当箱に、出来上がった料理とご飯を冷ましてひきつめ。彩にプチトマトを乗せて、ご飯に胡麻をふって「ガッツリ唐揚げ、照り焼きチキン弁当」の完成!

 んん、われながら、おいしそうにできたわ。
 みんな、このお弁当喜んでくれるといいな。

 残ったオカズとご飯は丼に全部盛って、ガッツリ丼にした。

 すこし休憩したあと、使わせてもらった厨房の後片付けをして、裏口に鍵をかけて部屋に戻る。

「キュ」

 目が覚めてお腹がすいたのか、子犬ちゃんが玄関でお出迎えしてくれた。

「おはよう、子犬ちゃん。朝食にしよう」

「キュン!」

 二人でガッツリ丼をペロリと食べて、サッとお風呂をすまし先輩に貰ったワンピースに着替え。作ったお弁当と、先輩から貰った鍵を持ち、壁の前に子犬ちゃんと並んでたつ。

 ーーフウッ、いくわよ。

 先輩の言っていたとおりに、壁に鍵を近付けた。
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