魔力なし悪役令嬢の"婚約破棄"後は、楽しい魔法と美味しいご飯があふれている。
24
「せ、先輩?」
「シーッ、ヤツに見つかりたくなかったら、少し黙っていて」
「ヤツ?」
「ルーが会いたくない、カロール殿下だ」
ヤツーーカロール殿下! シエル先輩にうなずき口を手で押さえた。その直後にノック無しで勢いよく扉が開き、どかどかと数人の足音が聞こえて、私たちのいるソファーの前で止まった。
「おい、シエル。貴様の部屋からなにやら親しげな、女性の声が聞こえたといましがた報告があったが? 誰を連れ込んのだ?」
声を荒げるカロールに対して、先輩は慌てず寝起きの演技を始める。
「ふわぁっ、なんですかいきなり……この女性は私の大切な人です。だから、親しげに話もするでしょう? ……フウッ、こんなに大勢引き連れて、ノックもなしに私の部屋に入って来るのは、いくら殿下でも失礼ではありませんか?」
「それは、そうだが……いいや、貴様、その胸の上にいる女性はルーチェ嬢ではあるまいな?」
(ドキッ!)
ーーな、なんで、いま私の名前が出るの?
ほんとうにシエル先輩の上にいますけど……先輩は胸を揺らし"クックク"と低く喉で笑い。
「カロール殿下は何を言ってるのですか? ルーチェ様はまだ見つかってはおりませんよ。どうして、その方が私の胸の中などいるのでしょうか?」
「……貴様と仲がよかった、と報告を開けている」
「ただの、友達だったと伝えましたが?」
平然とカロールと話す先輩だけど、それとは裏腹にシエル先輩の指先は私の髪を撫でて、クルクルと指に髪を絡めて遊ぶ。それがくすぐったくて、笑いそうで……ドキドキと緊張が混ざる。
「「ドクン!」」
いきなり"ドクン"と体全体が脈を撃ち、体がピキピキと音が鳴るくらいに痛くなる。その痛みに我慢出来ず(くっ)と声に出さないようにうめいた。それに気付いた先輩は声を上げ。
「カロール殿下、私の大切な人が目を覚ましてしまう、お帰りください……それとも殿下はルーチェ様ではなく、彼女の肌を見たいのですか?」
腕の中の女性が騒ぎに気付き起きてしまう、と、先輩に強めに言われて。ことが、ことだけにカロールは引き下がった。
「すまなかった、シエルと女性……失礼した。戻るぞ!」
「「はっ!」」
大勢を連れて部屋を出て行き、静かになる先輩の部屋。その部屋の中でシエル先輩は"指をパチン"と鳴らしてローブを剥ぎ取った。
「ルーが来て驚いていたから、見張られていることを忘れていた。ルー、遮音の魔法を使った話しても外に聞こえないぞ。……はあ、それにしてもビックリしたな」
「はい、びっくりしました」
ムクっと起き上がって、シエル先輩を見上げたら、先輩の瞳がひらいて。
「はあ? え、ええ? ル、ルー? お前、自分の体を見てみろ」
「え、自分の体? あれ? 先輩の姿がやけに、大きく……見えるけど?」
コテンと首を傾げる。
「そうだろうな……お前、この部屋で魔法陣を描いた紙に触らなかったか?」
「魔法陣の紙? あ、それなら拾って、そこの研究机に置きましたけど……?」
「まじか……触ったのか。そうか……それが原因だ、ルーお前、ネズミの姿になっているぞ」
ネズミ? 自分の体を見ると白銀色の髪と、同じ色のふさふさな毛が見えた。
「ほんとうだ。でも、これってネズミじゃなくて、ハムスターかな? それともチンチラ?」
「チンチラより小さいから、ハムスターの方だろうな」
「そっか……ハムスターか」
私はシエル先輩が描いた、魔法陣の紙を触ってしまい、ハムスターの姿になっていた。
「シーッ、ヤツに見つかりたくなかったら、少し黙っていて」
「ヤツ?」
「ルーが会いたくない、カロール殿下だ」
ヤツーーカロール殿下! シエル先輩にうなずき口を手で押さえた。その直後にノック無しで勢いよく扉が開き、どかどかと数人の足音が聞こえて、私たちのいるソファーの前で止まった。
「おい、シエル。貴様の部屋からなにやら親しげな、女性の声が聞こえたといましがた報告があったが? 誰を連れ込んのだ?」
声を荒げるカロールに対して、先輩は慌てず寝起きの演技を始める。
「ふわぁっ、なんですかいきなり……この女性は私の大切な人です。だから、親しげに話もするでしょう? ……フウッ、こんなに大勢引き連れて、ノックもなしに私の部屋に入って来るのは、いくら殿下でも失礼ではありませんか?」
「それは、そうだが……いいや、貴様、その胸の上にいる女性はルーチェ嬢ではあるまいな?」
(ドキッ!)
ーーな、なんで、いま私の名前が出るの?
ほんとうにシエル先輩の上にいますけど……先輩は胸を揺らし"クックク"と低く喉で笑い。
「カロール殿下は何を言ってるのですか? ルーチェ様はまだ見つかってはおりませんよ。どうして、その方が私の胸の中などいるのでしょうか?」
「……貴様と仲がよかった、と報告を開けている」
「ただの、友達だったと伝えましたが?」
平然とカロールと話す先輩だけど、それとは裏腹にシエル先輩の指先は私の髪を撫でて、クルクルと指に髪を絡めて遊ぶ。それがくすぐったくて、笑いそうで……ドキドキと緊張が混ざる。
「「ドクン!」」
いきなり"ドクン"と体全体が脈を撃ち、体がピキピキと音が鳴るくらいに痛くなる。その痛みに我慢出来ず(くっ)と声に出さないようにうめいた。それに気付いた先輩は声を上げ。
「カロール殿下、私の大切な人が目を覚ましてしまう、お帰りください……それとも殿下はルーチェ様ではなく、彼女の肌を見たいのですか?」
腕の中の女性が騒ぎに気付き起きてしまう、と、先輩に強めに言われて。ことが、ことだけにカロールは引き下がった。
「すまなかった、シエルと女性……失礼した。戻るぞ!」
「「はっ!」」
大勢を連れて部屋を出て行き、静かになる先輩の部屋。その部屋の中でシエル先輩は"指をパチン"と鳴らしてローブを剥ぎ取った。
「ルーが来て驚いていたから、見張られていることを忘れていた。ルー、遮音の魔法を使った話しても外に聞こえないぞ。……はあ、それにしてもビックリしたな」
「はい、びっくりしました」
ムクっと起き上がって、シエル先輩を見上げたら、先輩の瞳がひらいて。
「はあ? え、ええ? ル、ルー? お前、自分の体を見てみろ」
「え、自分の体? あれ? 先輩の姿がやけに、大きく……見えるけど?」
コテンと首を傾げる。
「そうだろうな……お前、この部屋で魔法陣を描いた紙に触らなかったか?」
「魔法陣の紙? あ、それなら拾って、そこの研究机に置きましたけど……?」
「まじか……触ったのか。そうか……それが原因だ、ルーお前、ネズミの姿になっているぞ」
ネズミ? 自分の体を見ると白銀色の髪と、同じ色のふさふさな毛が見えた。
「ほんとうだ。でも、これってネズミじゃなくて、ハムスターかな? それともチンチラ?」
「チンチラより小さいから、ハムスターの方だろうな」
「そっか……ハムスターか」
私はシエル先輩が描いた、魔法陣の紙を触ってしまい、ハムスターの姿になっていた。