魔力なし悪役令嬢の"婚約破棄"後は、楽しい魔法と美味しいご飯があふれている。
25
なぜか私は小麦畑のなかを走る、馬車に揺られていた。
「すごく、長閑だなぁ〜」
シエル先輩の研究室で、先輩が描いた魔法陣に触れ、ハムスターになってしまった。そんな私を一人ここに置いていけないと言われて、先輩にくっ付いて馬車に揺られている。
ーー私を探す"ルーチェ捜索隊"だそうだ。
そう、反対側の席に2度と会いたくなかった、カロール王子殿下がどっかり座っている。彼は何も発すること無く、目を瞑り腕を組んでいた。
殿下は少し痩せた? そんな気がした。
+
彼は婚約破棄をした私を探しているのだろうか? まだ馬車に乗るまえ、先輩の研究室で話を聞いた。
「ねぇ、先輩」
声を出すとカタッと音が聞こえて、外にいる騎士に話が聞こえちゃうと。手で口元を押さえた。
「ルー、大丈夫。遮音の魔法で外の奴には聞こえなくしてあるから、普通に話しても平気だ」
「それなら安心ね。先輩、お腹すいていない?」
作業机に置いたお弁当箱を指さした。ちなみにお弁当はひとり一個、先輩と弟さんと、子犬、私の分。
「なに、ルーの手作り弁当? 俺の分もあるのか?」
「うん、あるよ」
「卵焼きは?」
「もちろん、はいってる」
作業机を少し片付けて、作ってきたお弁当を広げた。中身は今朝作った唐揚げ、照り焼きチキン、卵焼きをみて先輩は嬉しそう。
「「いただきます」」
お弁当を食べながら、さっきのことを聞いた。殿下はさっき、シエル先輩の上にいる女性が私かもと嫉妬したように感じた。彼が私を探す理由はーー私を不敬罪にしたいのではなく、別の理由があるのかもと……考えた。
「うーん、あまりルーには言いたくないが。こうなったら、ルーにも知る権利があるな……」
「権利ですか?」
先輩は頷き。
「殿下は学園が始まってから、ずっと隣にいた女性ーーリリーナ様の魅了魔法にかかっていたんだ」
「え、リリーナ様の魅了魔法?」
ヒロインってそんな魔法が使えたんだ。
「そそ、いちおう対策とかしていたんだろうけど、殿下の魔力よりリリーナ様の方が魔力が強かった……それを舞踏会の日、偶然にもルーが解いちまったんだ」
え?
「えぇ、私がリリーナ様がかけた魅了魔法を解いた? 魔力なしの私が?」
コテンと、唐揚げを食べながら首を傾げた。
「だよな。でも、ルーのひと言――「お慕いしておりました」の言葉で確実に解けた。俺はその場にいなかったから、わからないけど"多分そうだろうって"その舞踏会の会場内にいた、魔導省の上司が言っていたよ」
ーーあの言葉で?
「まさか、あのとき聞こえた何かが割れた音。それは、私が殿下にかかる魅了魔法を解いた音だった」
「そうなるな。上司の話だと、ルーが会場を去ったあと大変だったらしい。殿下はリリーナ様に「お前では無い!」とは言ったが……公の場、大勢の貴族の前でルーに婚約破棄といってしまった手前、撤回もできず。国王陛下の怒りもかい、リリーナ様を放り出すこともできず、離れに住まわせているらしい」
……城の離れ。
「離れって、側室が入る予定の離れですか?」
「そうだ」
先輩の話は続く。カロールはリリーナを離れに入れただけで、会いにいく様子はない。
あんなにリリーナを慕っていた親衛隊たちも、いつの間にか彼女から離れて、他の令嬢と婚約、結婚をしてしまったらしい。
(あんなに、リリーナ様を好きだ、愛していると言っていた、親衛隊も離れていった……)
「ところで、学園一位の魔力保持者として言われていた先輩は、カロール殿下が魅了にかかっていたことを、もしかして知っていた?」
そう聞き返すと、先輩は凄く動揺してむせた。
「ゴホッ……いやっ、すまん知っていた」
「…………やっぱり」
でも、私が知ってもどうにもできないし。
いくら。ヒロインーーリリーナの魅了にかかっていたとはいえ、傷付け、酷いことをしたあの人達を私は許せない。突き飛ばされ、階段から落ちた恐怖……今更そんなことを聞いても、私の心はこれっぽっちも動かない。
「学園で、シエル先輩にはたくさん助けてもらったのか。先輩、ありがとう」
「ありがとう? 俺が知っていたことを怒らないのか?」
"怒る"と聞いて、私はほっぺを膨らまして、小さな体を反転させて背を向けた。
「私は違う事では怒っていますよ。シエル先輩は私に隠し事をしていました」
「はあ? 俺が、ルーにかくしごと?」
「そう隠しごとです。私は先輩の髪色が黒だなんて知らなかった」
それに、先輩は慌てた。
「いや、待て。俺のこの黒髪はこの国では不吉だと、呪われているだと言われている。だから、この国に来ることになって色を変えたんだ」
黒髪が不吉だとは、聞いたことがあるけど、
シエル先輩がこの国に来ることになった?
「えぇ、先輩はこの国の人じゃなかったの?」
驚きの事実を知った。
「すごく、長閑だなぁ〜」
シエル先輩の研究室で、先輩が描いた魔法陣に触れ、ハムスターになってしまった。そんな私を一人ここに置いていけないと言われて、先輩にくっ付いて馬車に揺られている。
ーー私を探す"ルーチェ捜索隊"だそうだ。
そう、反対側の席に2度と会いたくなかった、カロール王子殿下がどっかり座っている。彼は何も発すること無く、目を瞑り腕を組んでいた。
殿下は少し痩せた? そんな気がした。
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彼は婚約破棄をした私を探しているのだろうか? まだ馬車に乗るまえ、先輩の研究室で話を聞いた。
「ねぇ、先輩」
声を出すとカタッと音が聞こえて、外にいる騎士に話が聞こえちゃうと。手で口元を押さえた。
「ルー、大丈夫。遮音の魔法で外の奴には聞こえなくしてあるから、普通に話しても平気だ」
「それなら安心ね。先輩、お腹すいていない?」
作業机に置いたお弁当箱を指さした。ちなみにお弁当はひとり一個、先輩と弟さんと、子犬、私の分。
「なに、ルーの手作り弁当? 俺の分もあるのか?」
「うん、あるよ」
「卵焼きは?」
「もちろん、はいってる」
作業机を少し片付けて、作ってきたお弁当を広げた。中身は今朝作った唐揚げ、照り焼きチキン、卵焼きをみて先輩は嬉しそう。
「「いただきます」」
お弁当を食べながら、さっきのことを聞いた。殿下はさっき、シエル先輩の上にいる女性が私かもと嫉妬したように感じた。彼が私を探す理由はーー私を不敬罪にしたいのではなく、別の理由があるのかもと……考えた。
「うーん、あまりルーには言いたくないが。こうなったら、ルーにも知る権利があるな……」
「権利ですか?」
先輩は頷き。
「殿下は学園が始まってから、ずっと隣にいた女性ーーリリーナ様の魅了魔法にかかっていたんだ」
「え、リリーナ様の魅了魔法?」
ヒロインってそんな魔法が使えたんだ。
「そそ、いちおう対策とかしていたんだろうけど、殿下の魔力よりリリーナ様の方が魔力が強かった……それを舞踏会の日、偶然にもルーが解いちまったんだ」
え?
「えぇ、私がリリーナ様がかけた魅了魔法を解いた? 魔力なしの私が?」
コテンと、唐揚げを食べながら首を傾げた。
「だよな。でも、ルーのひと言――「お慕いしておりました」の言葉で確実に解けた。俺はその場にいなかったから、わからないけど"多分そうだろうって"その舞踏会の会場内にいた、魔導省の上司が言っていたよ」
ーーあの言葉で?
「まさか、あのとき聞こえた何かが割れた音。それは、私が殿下にかかる魅了魔法を解いた音だった」
「そうなるな。上司の話だと、ルーが会場を去ったあと大変だったらしい。殿下はリリーナ様に「お前では無い!」とは言ったが……公の場、大勢の貴族の前でルーに婚約破棄といってしまった手前、撤回もできず。国王陛下の怒りもかい、リリーナ様を放り出すこともできず、離れに住まわせているらしい」
……城の離れ。
「離れって、側室が入る予定の離れですか?」
「そうだ」
先輩の話は続く。カロールはリリーナを離れに入れただけで、会いにいく様子はない。
あんなにリリーナを慕っていた親衛隊たちも、いつの間にか彼女から離れて、他の令嬢と婚約、結婚をしてしまったらしい。
(あんなに、リリーナ様を好きだ、愛していると言っていた、親衛隊も離れていった……)
「ところで、学園一位の魔力保持者として言われていた先輩は、カロール殿下が魅了にかかっていたことを、もしかして知っていた?」
そう聞き返すと、先輩は凄く動揺してむせた。
「ゴホッ……いやっ、すまん知っていた」
「…………やっぱり」
でも、私が知ってもどうにもできないし。
いくら。ヒロインーーリリーナの魅了にかかっていたとはいえ、傷付け、酷いことをしたあの人達を私は許せない。突き飛ばされ、階段から落ちた恐怖……今更そんなことを聞いても、私の心はこれっぽっちも動かない。
「学園で、シエル先輩にはたくさん助けてもらったのか。先輩、ありがとう」
「ありがとう? 俺が知っていたことを怒らないのか?」
"怒る"と聞いて、私はほっぺを膨らまして、小さな体を反転させて背を向けた。
「私は違う事では怒っていますよ。シエル先輩は私に隠し事をしていました」
「はあ? 俺が、ルーにかくしごと?」
「そう隠しごとです。私は先輩の髪色が黒だなんて知らなかった」
それに、先輩は慌てた。
「いや、待て。俺のこの黒髪はこの国では不吉だと、呪われているだと言われている。だから、この国に来ることになって色を変えたんだ」
黒髪が不吉だとは、聞いたことがあるけど、
シエル先輩がこの国に来ることになった?
「えぇ、先輩はこの国の人じゃなかったの?」
驚きの事実を知った。