魔力なし悪役令嬢の"婚約破棄"後は、楽しい魔法と美味しいご飯があふれている。
39
「それじゃ、料理を始めます。ラエルさん、キッチンをお借りしますね」
「どうぞ、好きに使って」
私とラエルさんのやりとりに。
「なあ、いつの間にルーはラエルのこと、名前で呼んでいるんだ?」
先輩が私を眉を細めて見た。えっ、怒ってる? 先輩は気にしないと思っていたから驚いた。
「だって、いつまでも店の名前や先輩の弟さんじゃ、変かなーって思って、買い物にでた時から呼ばせてもらっているけど……」
「ふーん、弟は名前よびで、俺はまだ先輩よびかよ……ふーん。ルー、キッチンはこっちだぞ」
「あ、シエル先輩、待って」
先輩はムッとして店の奥に入っていく、その後を追った。中に入ると一人には十分な、水色のタイル張りの可愛いキッチンと、二人がけテーブルが置いてあった。
「わぁ、普通のキッチンだ」
「そんなの、当たり前だろ?」
先輩とラエルさんは魔法使いだから、変な壺とか、キッチン道具が浮いてると思っていた。紅茶を入れるとき、先輩はカップ、ポットを浮かしたりするから。
「クク、ご期待に添えなくて悪いな。しかし、ルーは魔法使いに夢を見過ぎだ」
「だって、夢だって見るし、憧れる」
魔法が使えないからこそなおさらだ。私が暗い顔してたのか、ポンポンと先輩にあやされる。
「無理なのはわかってるよ。さあ、料理を始めましょう」
持ってきたエプロンを付け手を洗う。その横で先輩は黒いローブを脱ぎ、椅子にかけて中に着てたシャツの袖をまくり手を洗った。
「先輩も手伝ってくれるの?」
「あぁ、なにからやればいい?」
さきにお米をお鍋で炊いて、チキンライスに入れる野菜と鶏肉を細かく切る。私はお米を炊くから、先輩には野菜と鶏肉をお願いした。
手際よく、まな板の上で野菜が切られていく、それを眺めらながら。
「でも、先輩が外で熟睡するなんて珍しいね」
ベッドではじっくりみたけど。学園のとき一、二回くらいしか、熟睡をする先輩を見たことがなかった……私はよく見られたけど。
「ん? ここに来る前にさ……面倒くさい、奴らに会って疲れたからだな……」
「面倒な人? それは大変だったね、今日はたくさん食べてゆっくりしょう」
「ははっ、そうだな」
――笑った顔が可愛い。
先輩と横に並んでたわいもない会話をして、いっしょに料理ができて嬉しい。最近、シエル先輩と過ごす日が増えて――幸せだ。
「ルー、野菜と鶏肉を切ったけど、次はどうするんだ?」
「えーっと、次はフライパンで切った具材をバターで炒めて」
「わかった」
ご飯はもうすぐ炊ける。炊けたら、炒めた野菜と鶏肉でチキンライスを作って。別のフライパンでふわとろ卵を焼き、包んでオムライスの出来上がり。サラダはできたものを買ったし、スープはワカメの粉末スープ……給料日前でお金が足らなかった。
私が言い出したことだから、自分が買える範囲で準備した。炊けて蒸らしておいたご飯の蓋をあける。
――甘く、いい匂いで固さもいいわ。
「いい感じに、ご飯が炊けた」
「鍋に焦げつかないなんて、うまく炊くな」
「フフ、ガリタ食堂で美味しく炊く練習をしたもの。先輩が炒めた野菜と鶏肉にバターとケチャップ、塩コショウを入れて炒め合わせたところに、炊きたてのご飯をいれて混ぜ合わせれば――チキンライスの完成だよ」
覚えている、自分流でチキンライスをつくる。
「おお、これだけでも美味そうだ」
「おいしいよ、味見、味見。ん、美味しい」
先輩もチキンライスを味見して"うまい!"とうなずいた。
「別のフライパンで溶き卵を流して、半熟になったら、使ったチキンライスを乗せて巻くの」
フライパンで半熟卵を作り、1人分のチキンライスを乗せて。フライパンの淵でよせて、お皿を持ちながらくるっと回して、ふわとろのオムライスがお皿に乗った。
あとはケチャップをかけて「できあがり!」だと先輩に見せた。
「はい、これがオムライスです」
「すげぇ、美味しそう。早く食べたいな」
「そうだね、みんなの分も作っちゃおう」
スープ、サラダを取り分けて出来上がった、
オムライスをテーブルに並べた。
「これで、よし!」
「ラエル、子犬。オムライスが出来たぞ!」
お店は休憩中にしてみんなでの昼食。子犬ちゃんはさっき食べたからと小さなオムライスにしたら、案の定足りなくて、ラエルさんのオムライスに突撃した。
「げっ、子犬!」
「子犬ちゃん!」
「キャン、キャン」
ぺろっとラエルさんのを半分食べて、それでも足らないと、私と先輩の皿に狙いをさだめた。
「俺のはやらないぞ」
「私、だって嫌よ」
シエル先輩と、私は食べかけを待ったまま立ち上がる、その下で欲しいと鳴いた。ラエルさんのオムライスは無残で、子犬ちゃんと言い合いしていた。
仕方がないと私と先輩のを、新しいお皿に少しおすそわけした。
「美味しいな、オムライス」
「うん、美味しいね」
「ほんとだ、美味しい」
食べ終わって、ケチャップまみれの子犬ちゃんは、同じくケチャップまみれのラエルさんに抱えられて、一緒にお風呂中。
お風呂場で怒られながら「嫌だ、嫌だ」と鳴いている。片付けを終えてテーブルに着くと、シエル先輩が紅茶を入れてくれた。
「まったく……あいつは自業自得だな。はい、紅茶」
「ありがとう。でも、子犬ちゃんとラエルさんのケチャップの匂い取れるかな?」
「知らん。子犬は自分で付けたんだ、我慢するしかないな。ラエルはまあ平気だろう」
「それなら安心だね」
「……なぁ、ルー」
なんですか? と先輩を見ると、何故か? 先輩は頬を少し赤くさせていた。
「頼む、一度でもいい。俺のことをシエルって呼んでくれ」
「えっ……」
シエル先輩の真剣な、赤い瞳が私をみつめている。
「ルー、呼んで」
「…………シ、シエルさん」
うわっ、一気に耳が頬が熱く"ぼっ"と体に火が付いた感じがした。シエル先輩と呼ぶのに慣れてるから、名前を呼ぶだけで照れる。
ラエルさんを呼ぶときとは違う。
「いいな。そう、呼んでくれると嬉しい」
先輩はしんそこ嬉しそうに瞳を細めた。
「もう、一回呼んで」
「……シエルさん」
先輩の喜ぶ顔をみていたら、私まで嬉しくなっちゃった。まだ呼ぶのは照れてしまうけど、これからは先輩のことをシエルさんと呼ぼう。
「そうだ、親子丼、オムライスの他にも卵料理ってあるのか?」
「ありますよ。親子丼は鳥肉ですが、揚げたカツを卵で閉じるカツ丼、ハンバーグのタネの中にゆで卵を入れて揚げるスコッチエッグとか、まだ、まだ卵料理はたくさんあります」
「カツ丼、スコッチエッグか――どれも美味そうだな。でも、この前に食べた親子丼がもう一度食べたい」
「だったら……」
作りますよ。と言う前に、ラエルさんと子犬ちゃんがお風呂から上がってきて。
「親子丼て何?」
「キュン?」
「親子丼とは……卵と鶏肉、玉ねぎを使った料理で」
知らない2人に料理の説明をする。おいしそう、食べてみたい、と言ったので。次の、お休みの日に作りにくることになり、材料費は先輩がだすといった。
「そろそろ、外が暗くなってきたな。ルーは明日、仕事だろ?」
「はい、遅くなってきたので帰ります」
シエル先輩はラエルさんに用事があると残り、子犬ちゃんも魔法屋さんに残るといった。
「またね、おやすみさい」
「ルー、おやすみ」
「おやすみなさい、ルーチェさん」
「キューン」
私はみんなに手を振り、魔法の扉を閉めて自分の部屋に戻ったのだった。
「どうぞ、好きに使って」
私とラエルさんのやりとりに。
「なあ、いつの間にルーはラエルのこと、名前で呼んでいるんだ?」
先輩が私を眉を細めて見た。えっ、怒ってる? 先輩は気にしないと思っていたから驚いた。
「だって、いつまでも店の名前や先輩の弟さんじゃ、変かなーって思って、買い物にでた時から呼ばせてもらっているけど……」
「ふーん、弟は名前よびで、俺はまだ先輩よびかよ……ふーん。ルー、キッチンはこっちだぞ」
「あ、シエル先輩、待って」
先輩はムッとして店の奥に入っていく、その後を追った。中に入ると一人には十分な、水色のタイル張りの可愛いキッチンと、二人がけテーブルが置いてあった。
「わぁ、普通のキッチンだ」
「そんなの、当たり前だろ?」
先輩とラエルさんは魔法使いだから、変な壺とか、キッチン道具が浮いてると思っていた。紅茶を入れるとき、先輩はカップ、ポットを浮かしたりするから。
「クク、ご期待に添えなくて悪いな。しかし、ルーは魔法使いに夢を見過ぎだ」
「だって、夢だって見るし、憧れる」
魔法が使えないからこそなおさらだ。私が暗い顔してたのか、ポンポンと先輩にあやされる。
「無理なのはわかってるよ。さあ、料理を始めましょう」
持ってきたエプロンを付け手を洗う。その横で先輩は黒いローブを脱ぎ、椅子にかけて中に着てたシャツの袖をまくり手を洗った。
「先輩も手伝ってくれるの?」
「あぁ、なにからやればいい?」
さきにお米をお鍋で炊いて、チキンライスに入れる野菜と鶏肉を細かく切る。私はお米を炊くから、先輩には野菜と鶏肉をお願いした。
手際よく、まな板の上で野菜が切られていく、それを眺めらながら。
「でも、先輩が外で熟睡するなんて珍しいね」
ベッドではじっくりみたけど。学園のとき一、二回くらいしか、熟睡をする先輩を見たことがなかった……私はよく見られたけど。
「ん? ここに来る前にさ……面倒くさい、奴らに会って疲れたからだな……」
「面倒な人? それは大変だったね、今日はたくさん食べてゆっくりしょう」
「ははっ、そうだな」
――笑った顔が可愛い。
先輩と横に並んでたわいもない会話をして、いっしょに料理ができて嬉しい。最近、シエル先輩と過ごす日が増えて――幸せだ。
「ルー、野菜と鶏肉を切ったけど、次はどうするんだ?」
「えーっと、次はフライパンで切った具材をバターで炒めて」
「わかった」
ご飯はもうすぐ炊ける。炊けたら、炒めた野菜と鶏肉でチキンライスを作って。別のフライパンでふわとろ卵を焼き、包んでオムライスの出来上がり。サラダはできたものを買ったし、スープはワカメの粉末スープ……給料日前でお金が足らなかった。
私が言い出したことだから、自分が買える範囲で準備した。炊けて蒸らしておいたご飯の蓋をあける。
――甘く、いい匂いで固さもいいわ。
「いい感じに、ご飯が炊けた」
「鍋に焦げつかないなんて、うまく炊くな」
「フフ、ガリタ食堂で美味しく炊く練習をしたもの。先輩が炒めた野菜と鶏肉にバターとケチャップ、塩コショウを入れて炒め合わせたところに、炊きたてのご飯をいれて混ぜ合わせれば――チキンライスの完成だよ」
覚えている、自分流でチキンライスをつくる。
「おお、これだけでも美味そうだ」
「おいしいよ、味見、味見。ん、美味しい」
先輩もチキンライスを味見して"うまい!"とうなずいた。
「別のフライパンで溶き卵を流して、半熟になったら、使ったチキンライスを乗せて巻くの」
フライパンで半熟卵を作り、1人分のチキンライスを乗せて。フライパンの淵でよせて、お皿を持ちながらくるっと回して、ふわとろのオムライスがお皿に乗った。
あとはケチャップをかけて「できあがり!」だと先輩に見せた。
「はい、これがオムライスです」
「すげぇ、美味しそう。早く食べたいな」
「そうだね、みんなの分も作っちゃおう」
スープ、サラダを取り分けて出来上がった、
オムライスをテーブルに並べた。
「これで、よし!」
「ラエル、子犬。オムライスが出来たぞ!」
お店は休憩中にしてみんなでの昼食。子犬ちゃんはさっき食べたからと小さなオムライスにしたら、案の定足りなくて、ラエルさんのオムライスに突撃した。
「げっ、子犬!」
「子犬ちゃん!」
「キャン、キャン」
ぺろっとラエルさんのを半分食べて、それでも足らないと、私と先輩の皿に狙いをさだめた。
「俺のはやらないぞ」
「私、だって嫌よ」
シエル先輩と、私は食べかけを待ったまま立ち上がる、その下で欲しいと鳴いた。ラエルさんのオムライスは無残で、子犬ちゃんと言い合いしていた。
仕方がないと私と先輩のを、新しいお皿に少しおすそわけした。
「美味しいな、オムライス」
「うん、美味しいね」
「ほんとだ、美味しい」
食べ終わって、ケチャップまみれの子犬ちゃんは、同じくケチャップまみれのラエルさんに抱えられて、一緒にお風呂中。
お風呂場で怒られながら「嫌だ、嫌だ」と鳴いている。片付けを終えてテーブルに着くと、シエル先輩が紅茶を入れてくれた。
「まったく……あいつは自業自得だな。はい、紅茶」
「ありがとう。でも、子犬ちゃんとラエルさんのケチャップの匂い取れるかな?」
「知らん。子犬は自分で付けたんだ、我慢するしかないな。ラエルはまあ平気だろう」
「それなら安心だね」
「……なぁ、ルー」
なんですか? と先輩を見ると、何故か? 先輩は頬を少し赤くさせていた。
「頼む、一度でもいい。俺のことをシエルって呼んでくれ」
「えっ……」
シエル先輩の真剣な、赤い瞳が私をみつめている。
「ルー、呼んで」
「…………シ、シエルさん」
うわっ、一気に耳が頬が熱く"ぼっ"と体に火が付いた感じがした。シエル先輩と呼ぶのに慣れてるから、名前を呼ぶだけで照れる。
ラエルさんを呼ぶときとは違う。
「いいな。そう、呼んでくれると嬉しい」
先輩はしんそこ嬉しそうに瞳を細めた。
「もう、一回呼んで」
「……シエルさん」
先輩の喜ぶ顔をみていたら、私まで嬉しくなっちゃった。まだ呼ぶのは照れてしまうけど、これからは先輩のことをシエルさんと呼ぼう。
「そうだ、親子丼、オムライスの他にも卵料理ってあるのか?」
「ありますよ。親子丼は鳥肉ですが、揚げたカツを卵で閉じるカツ丼、ハンバーグのタネの中にゆで卵を入れて揚げるスコッチエッグとか、まだ、まだ卵料理はたくさんあります」
「カツ丼、スコッチエッグか――どれも美味そうだな。でも、この前に食べた親子丼がもう一度食べたい」
「だったら……」
作りますよ。と言う前に、ラエルさんと子犬ちゃんがお風呂から上がってきて。
「親子丼て何?」
「キュン?」
「親子丼とは……卵と鶏肉、玉ねぎを使った料理で」
知らない2人に料理の説明をする。おいしそう、食べてみたい、と言ったので。次の、お休みの日に作りにくることになり、材料費は先輩がだすといった。
「そろそろ、外が暗くなってきたな。ルーは明日、仕事だろ?」
「はい、遅くなってきたので帰ります」
シエル先輩はラエルさんに用事があると残り、子犬ちゃんも魔法屋さんに残るといった。
「またね、おやすみさい」
「ルー、おやすみ」
「おやすみなさい、ルーチェさん」
「キューン」
私はみんなに手を振り、魔法の扉を閉めて自分の部屋に戻ったのだった。