魔力なし悪役令嬢の"婚約破棄"後は、楽しい魔法と美味しいご飯があふれている。
1
婚約破棄あと。王都から一時間かけて家にもどった私はかえりの挨拶もせず、部屋に駆けこみ必要な荷物をまとめはじめた。
(持っていくものはワンピースと……)
クローゼットを開き、いま着ているドレスとワンピース数着と下着。あとは貯めていたお金をカバンに入れて隠さないと。
罪が決まったすぐ、両親に屋敷を追い出される。せっせと二階の部屋で荷造りしていた。
ーーそこに。
「ロジエ公爵、ルーチェ嬢はこちらに戻ってきているか?」
いきなり、エントランスから聞き覚えのある男性の声が聞こえた――この声は国王陛下の側近の一人。どうして、カロール殿下の側近ではなく陛下の側近がきたの? いま舞踏会の帰りで混雑しているだろう、王都からこんなにも早く。
(まさか私が、カロール殿下を苦しめたとして捕まえにきた?)
だとしたら、牢屋、国外追放よりもひどい罰を受けるにちがいない。こうしてはいられない、ここから早くでないと。
(私の最後の告白の後の割れた音と、カロール殿下はどうして苦しみ出したの? それに私に逃げろと言ったあの声もだ)
考えてみたけど、さっぱり、わからない。
"ガンッ"と下の階から何かを叩いた音と。
「その話は誠なのか!」
お父様の怒りに満ちた声が聞こえた。
側近からカロール殿下との婚約破棄の話と、その後の話を聞き、お父様はかなりのご立腹のようだ。
だって、あの人は。
『お前は物覚えが悪い!』
『なぜ、こんな簡単なものができない!』
幼いころダンス、礼儀が出来ないといっては容赦なく私に手を上げた。泣いても、謝っても叩かれた――ゴクリ、そのときの恐怖は……いまも体に染み付いている。
「「はやく、ルーチェをここによんで来い!」」
"ひっ!"は、はやく、こんなところから出ていかないと……また、たたかれる。クローゼットからカバンを取りだして、舞踏会に着ていたドレスを乱暴に脱ぎいれた。
フッ。
(え、ええ? いまドレスがカバンの中に消えなかった?)
もう一枚。クローゼットのワンピースも入れてみると……カバンの中にフッときえた。
「…………」
おそる、おそる中に手を入れてみると、底がなく空洞……これって。ファンタジーゲーム、小説、漫画などで見たことがある"マジックバッグ"? 元オタクの私は瞬時に理解した。
(このカバンって、先輩がくれたものだ……そっけなく渡されたバッグが"マジックバッグ"だなんて。先輩ったら、な、なんてものをくれたの! でも、うれしい)
そうなのだとしたら。私は部屋を駆けまわり絵画、宝石、好きな本、溜め込んでいたお菓子をカバンに詰めこんだ。
最後に手にしたワンピースは。
『ル、ルーに似合うと思って、買ってきた……』
(私の誕生日の日に耳を真っ赤にしながら、先輩はこのワンピースをくれたんだよね……もしかして、これにも仕掛けがあったりして?)
「…………」
もしかするとこのワンピースにも、魔法がかかっている?
先輩なら、そうするかもしれない。これは着ていきましょう。先輩に貰った水色のワンピースに着替えたとき、部屋の扉がコンコンコンとノックされた。
(持っていくものはワンピースと……)
クローゼットを開き、いま着ているドレスとワンピース数着と下着。あとは貯めていたお金をカバンに入れて隠さないと。
罪が決まったすぐ、両親に屋敷を追い出される。せっせと二階の部屋で荷造りしていた。
ーーそこに。
「ロジエ公爵、ルーチェ嬢はこちらに戻ってきているか?」
いきなり、エントランスから聞き覚えのある男性の声が聞こえた――この声は国王陛下の側近の一人。どうして、カロール殿下の側近ではなく陛下の側近がきたの? いま舞踏会の帰りで混雑しているだろう、王都からこんなにも早く。
(まさか私が、カロール殿下を苦しめたとして捕まえにきた?)
だとしたら、牢屋、国外追放よりもひどい罰を受けるにちがいない。こうしてはいられない、ここから早くでないと。
(私の最後の告白の後の割れた音と、カロール殿下はどうして苦しみ出したの? それに私に逃げろと言ったあの声もだ)
考えてみたけど、さっぱり、わからない。
"ガンッ"と下の階から何かを叩いた音と。
「その話は誠なのか!」
お父様の怒りに満ちた声が聞こえた。
側近からカロール殿下との婚約破棄の話と、その後の話を聞き、お父様はかなりのご立腹のようだ。
だって、あの人は。
『お前は物覚えが悪い!』
『なぜ、こんな簡単なものができない!』
幼いころダンス、礼儀が出来ないといっては容赦なく私に手を上げた。泣いても、謝っても叩かれた――ゴクリ、そのときの恐怖は……いまも体に染み付いている。
「「はやく、ルーチェをここによんで来い!」」
"ひっ!"は、はやく、こんなところから出ていかないと……また、たたかれる。クローゼットからカバンを取りだして、舞踏会に着ていたドレスを乱暴に脱ぎいれた。
フッ。
(え、ええ? いまドレスがカバンの中に消えなかった?)
もう一枚。クローゼットのワンピースも入れてみると……カバンの中にフッときえた。
「…………」
おそる、おそる中に手を入れてみると、底がなく空洞……これって。ファンタジーゲーム、小説、漫画などで見たことがある"マジックバッグ"? 元オタクの私は瞬時に理解した。
(このカバンって、先輩がくれたものだ……そっけなく渡されたバッグが"マジックバッグ"だなんて。先輩ったら、な、なんてものをくれたの! でも、うれしい)
そうなのだとしたら。私は部屋を駆けまわり絵画、宝石、好きな本、溜め込んでいたお菓子をカバンに詰めこんだ。
最後に手にしたワンピースは。
『ル、ルーに似合うと思って、買ってきた……』
(私の誕生日の日に耳を真っ赤にしながら、先輩はこのワンピースをくれたんだよね……もしかして、これにも仕掛けがあったりして?)
「…………」
もしかするとこのワンピースにも、魔法がかかっている?
先輩なら、そうするかもしれない。これは着ていきましょう。先輩に貰った水色のワンピースに着替えたとき、部屋の扉がコンコンコンとノックされた。