魔力なし悪役令嬢の"婚約破棄"後は、楽しい魔法と美味しいご飯があふれている。
48
カロール殿下とリリーナさんは契約上夫婦となった。これで、すべて終わった。シエル先輩の部屋にみんな集まり、私はハムスターのまま説明する。
気が付いたら、ベッドの上で周りは鉄格子だったと。ガット君に出会い、なんとか逃げようとシエル先輩に貰ったファイアの杖を使ったら、鉄格子と壁をぶち破ってしまった。
移動中に子犬ちゃんと会い。明かりをつけようと、ライトの杖と間違えて雷の魔法の杖を使い――サンダーを撃って城の天井に穴を開け、空を飛んでいた福ちゃんが驚いて落ちてきた。
その後、騎士とメイドに追いかけられて、隠し通路のことを思い出して、そこに逃げ込んで移動して教会についたと伝え――戦利品のロールパンと果物をハムスターの姿のまま、カバンから取り出した。
「「…………プッ」」
「!」
シエル先輩とラエルさんは、あまりにも私が自慢げに取り出す様を見て、しばらく口元を抑え同じポーズで笑った。
「ククッ、可愛い……ボソッ、連れて帰りたい」
「フフ、フフ……ダメだよ、ちゃんと話を聞いてね」
先輩――フウッ、と息を吐き。私のカバンを漁り、魔法の杖を取りだして確かめはじめる。
「……おかしいな、ルーに渡した杖……子供のおもちゃくらいの威力にしたはず――あ、ああ! そうか、そうなんだな」
シエル先輩がひとりで、なにかに納得して頭をかかえた。隣で、ラエルさんが笑う。
「フフ、兄貴もようやく気付いた。ルーチェさんて面白いね」
「ラエル! ルーが面白いじゃない。だが、やはりそうなのか……クソッ、俺と同じか俺よりもか……嫌だな。俺だって杖を使えばアレくらいできる!」
「兄貴、意味のないことで、張り合わないの」
「ウルセェ、俺が守りたいんだぁ!」
私、福ちゃん、ガット君、子犬ちゃんは置いてけぼりで、2人で楽しそうに話す先輩とラエルさんをみていた。
しかし、この場所――城の先輩の部屋でのんびりしていてもいいのだろうか? まだ、状況を理解していない、騎士とメイドたちが私を探しているのでは?
「シエル先輩、早くここから離れよう」
「…………」
「シエル先輩?」
「………………」
さっきから、先輩が私のことを無視してくるのだけと、ハムスターの姿からも戻してくれない。
え、まさかね……
「……シ、シエルさん?」
「クク、そうだな。ルー、ようやく呼んだか」
ニッと、笑った。
「そう、呼ばないからって無視するのはひどい。……けど、シエルさん、ありがとう。ラエルさん、福ちゃん、ガット君、子犬ちゃん、ありがとう」
先輩は壊れた城の修復すると残るといい、私を元の姿に戻す。この前みたいに服は? と思ったけど、シエル先輩がかけた魔法だったからか……大丈夫だった。
子犬ちゃんとガット君も先輩と残り、私は明日? 今日の仕事もあるから福ちゃんに送ってもらう。ラエルさんもついてきて、ガリタ食堂の壊れた箇所を修復すると言ってくれた。
「ラエル、ウルラ、しっかり送ってくれよ」
「兄貴、まかせて」
「主人、では送ってきます」
城の外で大きくなった福ちゃんの背に乗ると、先輩が近寄り、眉をひそめ、けわしい表情で。
「ルー、明日……仕事が終わったら大切な話があるから、その、部屋にいくな」
「大切な話? わかりました。待っていますね」
福ちゃんが飛び立つ、なんとなくだけど……先輩の表情でわかる。シエル先輩は自分の国に帰ると言うのだろう。
私は。先輩、着いてきてと言ってほしい。だけど、優しい先輩の事だから自分の気持ちを言わず、私の意見を通すだろうな。
――そんな気がした。
+
福ちゃんに乗り、部屋に着く頃には夜明けだった。寝ても1時間くらいだろう。ラエルさんは杖を振り私の部屋、裏庭、食堂の壊れた箇所を直して「またね」と先輩の元へも戻っていった。
私はシャワーを浴びて部屋の掃除を始め、先輩に貰ったカバンに、自分のものをしまおうとして気付く。そういえばこのカバンの中には……最後の舞踏会に着ていたドレスと宝飾品。部屋から持ち出した絵画、着ないドレスなども入っていると。
ここに来たすぐに売ろうとしとけど、港街には売れず、王都だと足がつくから売れなかったんだ――もう、必要ないから売っちゃってもいいよね。
部屋の片付けをしていたら、仕込みの時間がきた。制服に着替えて裏庭に降りると、女将さんがいつものように仕込みの準備を始めている。
「おはようございます、女将さん」
「おはよう、ルーチェちゃん。今日も仕込みがんばろうね!」
「はい」
ガリタ食堂の朝の仕込みも終わり。朝食に分厚いメンチカツにキャベツとチーズ、ケチャップを挟んだホットサンドを食べて眠気はますますアップする。もう直ぐ開店だから気合を入れないと。
今日のガリタ食堂の日替わりは衣サクサク牛肉コロッケと分厚いメンチカツセットに、山盛りキャベツ、浅漬けきゅうりと大根、豆腐とわかめのお味噌汁。コロッケとメンチは醤油かソース、カラシはお好みで、
「ルーチェちゃん! 七番テーブルにお冷おしぼり出して」
「はーい!」
「ルーチェ、上がったぞ」
「はーい、コロッケとメンチカツは揚げたてなので、火傷に気を付けてください」
お客さんはコロッケとメンチカツをフーフー、ハフハフしながら美味しい顔で食べている。熱々でサクサクのコロッケ、肉汁が溢れ出るメンチカツを口に入れて、そこにご飯を頬張る。
ご飯が減ってきたら上にキャベツをひいて、コロッケ、メンチカツをいい乗せて。特製ソースをかければ、コロッケ、メンチカツ丼になって二度美味しい。
忘れちゃいけない、大将さんのきゅうりと大根の浅漬けは美味しいし。一から出汁をとって作る、わかめと豆腐の味噌汁も絶品だ。
朝食のメンチカツのホットサンドも美味しかった……
「ルーチェちゃん、足が止まってるよ」
「す、すみません!」
今日もガリタ食堂は多くのお客さんで賑わっている。本日の牛肉コロッケとメンチカツ定食は、瞬く間に完売した。
「お疲れ様、ルーチェちゃん」
「女将さん、大将さん、ニックさん、お疲れ様でした」
お、終わった……今日はさすがに疲れた。でも、揚げてる途中で割れちゃった、コロッケとメンチカツを大将さんに貰っちゃった。
「ただいま」
玄関のランタンを触って炎をつけると、奥からスースー寝息が聞こえた。ベッドに誰かいる……恐る恐る近くと、ベッドの上にシャツとズボン姿、黒い髪の男性が、胸に読みかけの本を抱き寝ていた。
また、私の読みかけの恋愛小説を読んでる。
着てきたであろう黒いローブはベッド脇に綺麗に畳まれていた。早めに部屋に来て、私の仕事が終わるまで待っていだけど……力尽きちゃったのかな。
「おつかれさま、シエルさん」
気が付いたら、ベッドの上で周りは鉄格子だったと。ガット君に出会い、なんとか逃げようとシエル先輩に貰ったファイアの杖を使ったら、鉄格子と壁をぶち破ってしまった。
移動中に子犬ちゃんと会い。明かりをつけようと、ライトの杖と間違えて雷の魔法の杖を使い――サンダーを撃って城の天井に穴を開け、空を飛んでいた福ちゃんが驚いて落ちてきた。
その後、騎士とメイドに追いかけられて、隠し通路のことを思い出して、そこに逃げ込んで移動して教会についたと伝え――戦利品のロールパンと果物をハムスターの姿のまま、カバンから取り出した。
「「…………プッ」」
「!」
シエル先輩とラエルさんは、あまりにも私が自慢げに取り出す様を見て、しばらく口元を抑え同じポーズで笑った。
「ククッ、可愛い……ボソッ、連れて帰りたい」
「フフ、フフ……ダメだよ、ちゃんと話を聞いてね」
先輩――フウッ、と息を吐き。私のカバンを漁り、魔法の杖を取りだして確かめはじめる。
「……おかしいな、ルーに渡した杖……子供のおもちゃくらいの威力にしたはず――あ、ああ! そうか、そうなんだな」
シエル先輩がひとりで、なにかに納得して頭をかかえた。隣で、ラエルさんが笑う。
「フフ、兄貴もようやく気付いた。ルーチェさんて面白いね」
「ラエル! ルーが面白いじゃない。だが、やはりそうなのか……クソッ、俺と同じか俺よりもか……嫌だな。俺だって杖を使えばアレくらいできる!」
「兄貴、意味のないことで、張り合わないの」
「ウルセェ、俺が守りたいんだぁ!」
私、福ちゃん、ガット君、子犬ちゃんは置いてけぼりで、2人で楽しそうに話す先輩とラエルさんをみていた。
しかし、この場所――城の先輩の部屋でのんびりしていてもいいのだろうか? まだ、状況を理解していない、騎士とメイドたちが私を探しているのでは?
「シエル先輩、早くここから離れよう」
「…………」
「シエル先輩?」
「………………」
さっきから、先輩が私のことを無視してくるのだけと、ハムスターの姿からも戻してくれない。
え、まさかね……
「……シ、シエルさん?」
「クク、そうだな。ルー、ようやく呼んだか」
ニッと、笑った。
「そう、呼ばないからって無視するのはひどい。……けど、シエルさん、ありがとう。ラエルさん、福ちゃん、ガット君、子犬ちゃん、ありがとう」
先輩は壊れた城の修復すると残るといい、私を元の姿に戻す。この前みたいに服は? と思ったけど、シエル先輩がかけた魔法だったからか……大丈夫だった。
子犬ちゃんとガット君も先輩と残り、私は明日? 今日の仕事もあるから福ちゃんに送ってもらう。ラエルさんもついてきて、ガリタ食堂の壊れた箇所を修復すると言ってくれた。
「ラエル、ウルラ、しっかり送ってくれよ」
「兄貴、まかせて」
「主人、では送ってきます」
城の外で大きくなった福ちゃんの背に乗ると、先輩が近寄り、眉をひそめ、けわしい表情で。
「ルー、明日……仕事が終わったら大切な話があるから、その、部屋にいくな」
「大切な話? わかりました。待っていますね」
福ちゃんが飛び立つ、なんとなくだけど……先輩の表情でわかる。シエル先輩は自分の国に帰ると言うのだろう。
私は。先輩、着いてきてと言ってほしい。だけど、優しい先輩の事だから自分の気持ちを言わず、私の意見を通すだろうな。
――そんな気がした。
+
福ちゃんに乗り、部屋に着く頃には夜明けだった。寝ても1時間くらいだろう。ラエルさんは杖を振り私の部屋、裏庭、食堂の壊れた箇所を直して「またね」と先輩の元へも戻っていった。
私はシャワーを浴びて部屋の掃除を始め、先輩に貰ったカバンに、自分のものをしまおうとして気付く。そういえばこのカバンの中には……最後の舞踏会に着ていたドレスと宝飾品。部屋から持ち出した絵画、着ないドレスなども入っていると。
ここに来たすぐに売ろうとしとけど、港街には売れず、王都だと足がつくから売れなかったんだ――もう、必要ないから売っちゃってもいいよね。
部屋の片付けをしていたら、仕込みの時間がきた。制服に着替えて裏庭に降りると、女将さんがいつものように仕込みの準備を始めている。
「おはようございます、女将さん」
「おはよう、ルーチェちゃん。今日も仕込みがんばろうね!」
「はい」
ガリタ食堂の朝の仕込みも終わり。朝食に分厚いメンチカツにキャベツとチーズ、ケチャップを挟んだホットサンドを食べて眠気はますますアップする。もう直ぐ開店だから気合を入れないと。
今日のガリタ食堂の日替わりは衣サクサク牛肉コロッケと分厚いメンチカツセットに、山盛りキャベツ、浅漬けきゅうりと大根、豆腐とわかめのお味噌汁。コロッケとメンチは醤油かソース、カラシはお好みで、
「ルーチェちゃん! 七番テーブルにお冷おしぼり出して」
「はーい!」
「ルーチェ、上がったぞ」
「はーい、コロッケとメンチカツは揚げたてなので、火傷に気を付けてください」
お客さんはコロッケとメンチカツをフーフー、ハフハフしながら美味しい顔で食べている。熱々でサクサクのコロッケ、肉汁が溢れ出るメンチカツを口に入れて、そこにご飯を頬張る。
ご飯が減ってきたら上にキャベツをひいて、コロッケ、メンチカツをいい乗せて。特製ソースをかければ、コロッケ、メンチカツ丼になって二度美味しい。
忘れちゃいけない、大将さんのきゅうりと大根の浅漬けは美味しいし。一から出汁をとって作る、わかめと豆腐の味噌汁も絶品だ。
朝食のメンチカツのホットサンドも美味しかった……
「ルーチェちゃん、足が止まってるよ」
「す、すみません!」
今日もガリタ食堂は多くのお客さんで賑わっている。本日の牛肉コロッケとメンチカツ定食は、瞬く間に完売した。
「お疲れ様、ルーチェちゃん」
「女将さん、大将さん、ニックさん、お疲れ様でした」
お、終わった……今日はさすがに疲れた。でも、揚げてる途中で割れちゃった、コロッケとメンチカツを大将さんに貰っちゃった。
「ただいま」
玄関のランタンを触って炎をつけると、奥からスースー寝息が聞こえた。ベッドに誰かいる……恐る恐る近くと、ベッドの上にシャツとズボン姿、黒い髪の男性が、胸に読みかけの本を抱き寝ていた。
また、私の読みかけの恋愛小説を読んでる。
着てきたであろう黒いローブはベッド脇に綺麗に畳まれていた。早めに部屋に来て、私の仕事が終わるまで待っていだけど……力尽きちゃったのかな。
「おつかれさま、シエルさん」