魔力なし悪役令嬢の"婚約破棄"後は、楽しい魔法と美味しいご飯があふれている。
49
仕事着を脱ごうとした所で、先輩の瞳がぱっちり開く。
「ただいま、せ……シエルさん」
「ルー……?」
「いま着替えるから、待っていてください」
仕事着のシャツのボタンに手をかけると、先輩はベッドの上でゴロリと転がり、コチラに背中を向けた。
「……すまん、ルーの仕事が終わるまで待っていたが、睡魔に負けた」
「シエルさんは、あのあと夜通しで城の修復してたんでしょう?」
頷く先輩をみて、タンスからワンピースを出して着替えて、仕事着はハンガーを通してフックにかけた。
「おつかれさまでした。着替えが終わったのでこちらを向いてください。……それで、昨日の帰り間際に言っていた、話を着せてください」
「あ? ああ、話だな」
ベッドから起きてきた先輩と、テーブルに2人見合って座った。前に座る、先輩の赤い瞳がどことなしか、迷って、揺れているような気がした。――そして、なかなか口を開かない。
先輩は私のこと後えすぎている?
そうだとしたら嬉しいけど――私は決めた。
「シエルさん……この部屋を見て、何か感じない?」
「え? 何かって、随分ものが片付いて、いる?」
「正解。シエルさんは自分の国に帰るのでしょう? 私も連れていって……離れなくない――私、先輩と一緒がいい」
先輩の瞳がひらく。
「お、俺はシット深くて、情けなくて……魔法しかない、ただそれだけの男だ。それでもいいのか?」
(……もう、先輩は自分の自己評価が低すぎだよ。優しくて、頼りになって、少し意地悪で――あげたりたらキリがないわ)
先輩をみつめながら、コクリと頷く。
「私は先輩、ううん。シエルのことが好き、大好き!」
大胆に、思い切って呼び捨て呼んだ……気付いた、シエル先輩の頬がみるみる真っ赤になって、口はパクパクして、アーッと叫び片手で顔を覆った。
「ルー、ずるい……これは不意打ちだ。好きだって、俺が先に言いたかったのに……でも、いいな、好きな子からの呼び捨てって……」
照れながら笑う先輩の顔が可愛かった。……だって、リリーナ様が先輩を呼び捨てで呼んでいて、悔しかったんだもん。
+
「お腹すいたね、コロッケとメンチカツもらったんだ」
「いいな、俺はくる途中でパン屋に寄ってきた」
と、袋を出す。中身はくるみパンとチョコパン、食パンが入っている。食パンをもらいコロッケとメンチカツを挟んで、特製ソースをかけ一口大に切ってお皿に乗せた――飲み物は先輩が魔法でだした紅茶。
「それで、先輩たちはいつ帰るの?」
そうだな。と言って考える先輩。その間――真ん中に置いた皿のコロッケとパン、メンチカツパンがどんどんなくなる、先輩もお腹空いていたんだ。
「……いちど、ラエルとも話さないとな。俺の方は城の部屋を片付けて魔導署も辞めてきた。あとは魔法屋の店仕舞いをするから――2、3日、いや1週間以内にはこの国をでたいと思っている」
「長くで一週間以内か……わかった。明日の仕事終わりに女将さんたちに伝えるね」
「ああ。そのとき、俺もついていくよ。……その、そのとき、俺を婚約者だと言ってくれると嬉しい」
「婚約者? シエルさんが婚約者かぁ、うれしい」
笑って伝えてると、先輩の手が伸びて手を握られた。ドクンっと鼓動がはねる。――指が長く、大きな男性の手……そして、私を見つめるやさしげな瞳。
「ルーに言ったけど、俺はかなりシット深い。手放さないから、覚悟して」
繋いだ手の指の間に指が絡む……驚いて見つめると、意地悪く笑う先輩がいた。
繋がったままの指と、目詰め合う瞳。
「このまま、ルーと2人きりで過ごしたいが……まだ、ルーに伝えることがある……いちど、魔法屋に行こう」
と、魔法の扉を出して扉が開き、先輩と魔法屋へと向かった。扉が開くと、ラエルさんが向かい入れてくれる。
「こんばんわ。いらっしゃい、兄貴、ルーチェさん」
「キュン」
「ただいま、ラエル、子犬」
「こんばんわ、ラエルさん、子犬ちゃん」
「それで、ルーに伝えたいことだが」
先輩はツカツカと、カウンターレジで鳴く黒いモコモコの子犬ちゃんの、ワキの下に手を入れ捕まえた。
「キュ?」
「兄貴?」
「シエルさん?」
「……………」
私の前で困った表情の子犬ちゃん、先輩の行動に驚くラエルさん。――とうの先輩は気にせず淡々と。
「ルーに紹介する。これが、うちの国の王子、ベルーガ・ストレーガだ」
うちの国のベルーガ・ストレーガ王子?
「「え? ええ、子犬ちゃん、王子だったの?」」
私の目の前にプラ〜ン、プラ〜ンと先輩の手にぶら下がる、黒くもふもふの子犬ちゃんが?
「ただいま、せ……シエルさん」
「ルー……?」
「いま着替えるから、待っていてください」
仕事着のシャツのボタンに手をかけると、先輩はベッドの上でゴロリと転がり、コチラに背中を向けた。
「……すまん、ルーの仕事が終わるまで待っていたが、睡魔に負けた」
「シエルさんは、あのあと夜通しで城の修復してたんでしょう?」
頷く先輩をみて、タンスからワンピースを出して着替えて、仕事着はハンガーを通してフックにかけた。
「おつかれさまでした。着替えが終わったのでこちらを向いてください。……それで、昨日の帰り間際に言っていた、話を着せてください」
「あ? ああ、話だな」
ベッドから起きてきた先輩と、テーブルに2人見合って座った。前に座る、先輩の赤い瞳がどことなしか、迷って、揺れているような気がした。――そして、なかなか口を開かない。
先輩は私のこと後えすぎている?
そうだとしたら嬉しいけど――私は決めた。
「シエルさん……この部屋を見て、何か感じない?」
「え? 何かって、随分ものが片付いて、いる?」
「正解。シエルさんは自分の国に帰るのでしょう? 私も連れていって……離れなくない――私、先輩と一緒がいい」
先輩の瞳がひらく。
「お、俺はシット深くて、情けなくて……魔法しかない、ただそれだけの男だ。それでもいいのか?」
(……もう、先輩は自分の自己評価が低すぎだよ。優しくて、頼りになって、少し意地悪で――あげたりたらキリがないわ)
先輩をみつめながら、コクリと頷く。
「私は先輩、ううん。シエルのことが好き、大好き!」
大胆に、思い切って呼び捨て呼んだ……気付いた、シエル先輩の頬がみるみる真っ赤になって、口はパクパクして、アーッと叫び片手で顔を覆った。
「ルー、ずるい……これは不意打ちだ。好きだって、俺が先に言いたかったのに……でも、いいな、好きな子からの呼び捨てって……」
照れながら笑う先輩の顔が可愛かった。……だって、リリーナ様が先輩を呼び捨てで呼んでいて、悔しかったんだもん。
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「お腹すいたね、コロッケとメンチカツもらったんだ」
「いいな、俺はくる途中でパン屋に寄ってきた」
と、袋を出す。中身はくるみパンとチョコパン、食パンが入っている。食パンをもらいコロッケとメンチカツを挟んで、特製ソースをかけ一口大に切ってお皿に乗せた――飲み物は先輩が魔法でだした紅茶。
「それで、先輩たちはいつ帰るの?」
そうだな。と言って考える先輩。その間――真ん中に置いた皿のコロッケとパン、メンチカツパンがどんどんなくなる、先輩もお腹空いていたんだ。
「……いちど、ラエルとも話さないとな。俺の方は城の部屋を片付けて魔導署も辞めてきた。あとは魔法屋の店仕舞いをするから――2、3日、いや1週間以内にはこの国をでたいと思っている」
「長くで一週間以内か……わかった。明日の仕事終わりに女将さんたちに伝えるね」
「ああ。そのとき、俺もついていくよ。……その、そのとき、俺を婚約者だと言ってくれると嬉しい」
「婚約者? シエルさんが婚約者かぁ、うれしい」
笑って伝えてると、先輩の手が伸びて手を握られた。ドクンっと鼓動がはねる。――指が長く、大きな男性の手……そして、私を見つめるやさしげな瞳。
「ルーに言ったけど、俺はかなりシット深い。手放さないから、覚悟して」
繋いだ手の指の間に指が絡む……驚いて見つめると、意地悪く笑う先輩がいた。
繋がったままの指と、目詰め合う瞳。
「このまま、ルーと2人きりで過ごしたいが……まだ、ルーに伝えることがある……いちど、魔法屋に行こう」
と、魔法の扉を出して扉が開き、先輩と魔法屋へと向かった。扉が開くと、ラエルさんが向かい入れてくれる。
「こんばんわ。いらっしゃい、兄貴、ルーチェさん」
「キュン」
「ただいま、ラエル、子犬」
「こんばんわ、ラエルさん、子犬ちゃん」
「それで、ルーに伝えたいことだが」
先輩はツカツカと、カウンターレジで鳴く黒いモコモコの子犬ちゃんの、ワキの下に手を入れ捕まえた。
「キュ?」
「兄貴?」
「シエルさん?」
「……………」
私の前で困った表情の子犬ちゃん、先輩の行動に驚くラエルさん。――とうの先輩は気にせず淡々と。
「ルーに紹介する。これが、うちの国の王子、ベルーガ・ストレーガだ」
うちの国のベルーガ・ストレーガ王子?
「「え? ええ、子犬ちゃん、王子だったの?」」
私の目の前にプラ〜ン、プラ〜ンと先輩の手にぶら下がる、黒くもふもふの子犬ちゃんが?