日給10万の結婚
「ほんと、圭吾が言う通りお前は大物だよ。俺が思ってた以上だ」
「だって、玲は絶対私の味方をしてくれるって分かってるからね。だから、私は胸を張っていられるんだよ」
正直にそう言うと、玲がこちらを見たのが分かった。
ほんと、これなんだ。玲はなんだかんだ、絶対に私を信じてるし味方してくれる。その安心感が、自分をここまで強くしたのだと思う。
ふいっと玲が顔を背け、窓の外を見る。
「まあ……分かってるならいい」
「はい照れてるー玲が照れてまーす」
「お前急に小学生出すのやめろ」
「玲は四六時中小学生みたいなものじゃん」
やんやんやと口論する私たちを乗せ、車は目的地にたどり着く。ついに到着し外を見てみると、なるほど豪邸が立っていた。玲の実家とは違ったタイプの金持ちの家だ。こりゃ凄い。
車は一旦家の前に停車させる。嫌味なほど立派な門の前だ。見ると、他にも数台高級車が停まり、婦人たちを降ろしている。
私は気合を入れた。するとまず玲が車から降り、ドアを開けてエスコートしてくれた。周りに人がいる中で、仲のいい夫婦を演じるためだろう。私は素直に甘え、彼の手を取る。
「さ、思いきり戦っちまえ」
「言われなくとも」
小声でそう会話を交わすと、私たちは笑いあった。そして小さく手を振り、玲から離れる。さあ、ここからはついに一人だ、やるしかない。
「舞香さん!」
名を呼ばれてどきりとする。もしやメロンが現れるかとドキドキして振り返ってみれば、倫子さんが私に手を振っていたのでほっとした。あの倫子さんの声と、ぶりっ子の声を聞き間違えるとは。倫子さんに土下座して謝りたい。
「倫子さん!」
「今日はよろしくお願いしますね」
隣に並び、笑いかけてくれることにほっとした。そうだ、完全にボッチというわけじゃない、倫子さんがいてくれるんだから。
彼女は私に囁いた。
「本当に仲がよろしいんですね。送ってくれるなんて」
ちらりと背後を振り返る。玲は未だ車に乗り込まず、私をじっと見送っていた。それに手を振って見せると、彼も小さく手を振り返した。最後まで見送ってくれるのがなんだか嬉しくて、顔がほころぶ。
「ちょっと心配症で」
「ふふ、愛されてる証拠ですね。微笑ましいです」
愛されてる、なんて。私たちが三千万で結ばれた結婚だと知ったら、倫子さんはどうなるだろう。愛なんて、ちっともないのにね。
倫子さんが言った。
「行きましょう、舞香さんならきっと伊集院様に気に入られると思います」
「はい、頑張ります!」
大きな家を見上げる。負けてたまるもんか、と心で呟いた。
バカでかい門を抜け、バカ広い玄関に入り、受付らしき人に招待状を手渡した。そこで、贈り物はここで預かる、ということを聞かされる。私は持っていた紙袋を握りしめた。多分、私の手汗が染み込んでるだろうな。
もう今更じたばたしてもしょうがないので、腹を括って手渡した。これがどういう結果になるかは、まだ分からないと思っている。
そしてそのまま中へと案内される。すでに何人も人は集まっているようで、がやがやと賑やかな声が聞こえた。
広々としたダイニングから、これまた広々とした庭が見える。飲み物や軽食などがテーブルの上に所狭しと乗っており、ドリンクはアルコールの用意もあるようだった。
一度ぐるりと周りを見渡してみるが、まだ伊集院さんもマミーたちも来ていないようだ。
倫子さんと共に部屋の隅に立つ。つくづく一人じゃなくてよかった、と思った。
「凄いですね、立派なおうち……」
「伊集院家ですからね。私も毎回圧倒されます」
以前倫子さんのお家に伺った時も、十分立派な家だと思ったが、やはりこっちは異次元の金持ちさだ。だが羨ましいと思うより、建築費はどれくらいなんだろうとか、掃除するのが大変そうとか、そういうことを思ってしまう自分はまだまだ貧乏人の心を捨ててはいない。
しばらく談笑していると、一瞬空気が凍ったのを感じ取った。見てみると、マミーと楓さんが中に入ってきたのである。
「だって、玲は絶対私の味方をしてくれるって分かってるからね。だから、私は胸を張っていられるんだよ」
正直にそう言うと、玲がこちらを見たのが分かった。
ほんと、これなんだ。玲はなんだかんだ、絶対に私を信じてるし味方してくれる。その安心感が、自分をここまで強くしたのだと思う。
ふいっと玲が顔を背け、窓の外を見る。
「まあ……分かってるならいい」
「はい照れてるー玲が照れてまーす」
「お前急に小学生出すのやめろ」
「玲は四六時中小学生みたいなものじゃん」
やんやんやと口論する私たちを乗せ、車は目的地にたどり着く。ついに到着し外を見てみると、なるほど豪邸が立っていた。玲の実家とは違ったタイプの金持ちの家だ。こりゃ凄い。
車は一旦家の前に停車させる。嫌味なほど立派な門の前だ。見ると、他にも数台高級車が停まり、婦人たちを降ろしている。
私は気合を入れた。するとまず玲が車から降り、ドアを開けてエスコートしてくれた。周りに人がいる中で、仲のいい夫婦を演じるためだろう。私は素直に甘え、彼の手を取る。
「さ、思いきり戦っちまえ」
「言われなくとも」
小声でそう会話を交わすと、私たちは笑いあった。そして小さく手を振り、玲から離れる。さあ、ここからはついに一人だ、やるしかない。
「舞香さん!」
名を呼ばれてどきりとする。もしやメロンが現れるかとドキドキして振り返ってみれば、倫子さんが私に手を振っていたのでほっとした。あの倫子さんの声と、ぶりっ子の声を聞き間違えるとは。倫子さんに土下座して謝りたい。
「倫子さん!」
「今日はよろしくお願いしますね」
隣に並び、笑いかけてくれることにほっとした。そうだ、完全にボッチというわけじゃない、倫子さんがいてくれるんだから。
彼女は私に囁いた。
「本当に仲がよろしいんですね。送ってくれるなんて」
ちらりと背後を振り返る。玲は未だ車に乗り込まず、私をじっと見送っていた。それに手を振って見せると、彼も小さく手を振り返した。最後まで見送ってくれるのがなんだか嬉しくて、顔がほころぶ。
「ちょっと心配症で」
「ふふ、愛されてる証拠ですね。微笑ましいです」
愛されてる、なんて。私たちが三千万で結ばれた結婚だと知ったら、倫子さんはどうなるだろう。愛なんて、ちっともないのにね。
倫子さんが言った。
「行きましょう、舞香さんならきっと伊集院様に気に入られると思います」
「はい、頑張ります!」
大きな家を見上げる。負けてたまるもんか、と心で呟いた。
バカでかい門を抜け、バカ広い玄関に入り、受付らしき人に招待状を手渡した。そこで、贈り物はここで預かる、ということを聞かされる。私は持っていた紙袋を握りしめた。多分、私の手汗が染み込んでるだろうな。
もう今更じたばたしてもしょうがないので、腹を括って手渡した。これがどういう結果になるかは、まだ分からないと思っている。
そしてそのまま中へと案内される。すでに何人も人は集まっているようで、がやがやと賑やかな声が聞こえた。
広々としたダイニングから、これまた広々とした庭が見える。飲み物や軽食などがテーブルの上に所狭しと乗っており、ドリンクはアルコールの用意もあるようだった。
一度ぐるりと周りを見渡してみるが、まだ伊集院さんもマミーたちも来ていないようだ。
倫子さんと共に部屋の隅に立つ。つくづく一人じゃなくてよかった、と思った。
「凄いですね、立派なおうち……」
「伊集院家ですからね。私も毎回圧倒されます」
以前倫子さんのお家に伺った時も、十分立派な家だと思ったが、やはりこっちは異次元の金持ちさだ。だが羨ましいと思うより、建築費はどれくらいなんだろうとか、掃除するのが大変そうとか、そういうことを思ってしまう自分はまだまだ貧乏人の心を捨ててはいない。
しばらく談笑していると、一瞬空気が凍ったのを感じ取った。見てみると、マミーと楓さんが中に入ってきたのである。