日給10万の結婚
「金城さん、この度はどうお詫びしていいのか分かりません」
「本当にうちのバカ息子が勝手な事を」
「いいえ、二階堂さんにはすでにたくさん謝罪を頂いておりますから……」
「頭を上げてください」
大人の謝罪タイムが始まっている。そこでようやく楓さんがパッと私の手を離した。玲を見上げると、彼は少しだけ微笑んでくれた。私に大丈夫だよ、と言っているように感じ取れた。それに少しだけ安心する。
元婚約者の乱入は想定外だったが、それ以外の挨拶は比較的うまくできていると自負していた。参加者リストも頭に叩き込んで必死に勉強したのだから、失敗するわけにはいかないのだ。
この場で『完璧な妻』は確実に無理だろうが、『そこそこな妻』ぐらいの印象を残しておかねばならない。楓さんは邪魔したいと思っているかもしれないが、何とか平穏に終わらせたい。
早くこのパーティー終わってくれないだろうか。楓さんたちの存在があまりに脅威だ。出来る限りそばにいたくはない。
玲が小声で言った。
「もう帰るか」
「え? でもまだ途中でしょう」
「予想外のことが起きた。主要人物には挨拶をし終えているし、対応もよかった。今日はこれぐらいにして引きあげた方が良い」
彼は鋭い目で楓さんたちを見た。確かに、これ以上はきついものがある。でも途中で帰って大丈夫だろうか、玲のご両親の印象がさらに悪くなる気がするのだが……
そう迷って考え込んだ時だった。突然、近くで女性の声が響いたのだ。
「ちーちゃん!? どうしたのちーちゃん!」
焦ったような声だった。何だろうと自然にそちらに視線が動いた。会場の隅にいた女性が、子供に向かって大きな声で呼びかけていた。小学二、三年生ぐらいの子だろうか。綺麗なドレスを着た可愛らしい女の子なのだが、体を前かがみにして何やら様子が変なのだ。
「…………?」
私は気になり、すぐさまそっちに駆け出していった。玲が背後で私の名を呼んだが、それよりも親子の様子が気になったのだ。
「本当にうちのバカ息子が勝手な事を」
「いいえ、二階堂さんにはすでにたくさん謝罪を頂いておりますから……」
「頭を上げてください」
大人の謝罪タイムが始まっている。そこでようやく楓さんがパッと私の手を離した。玲を見上げると、彼は少しだけ微笑んでくれた。私に大丈夫だよ、と言っているように感じ取れた。それに少しだけ安心する。
元婚約者の乱入は想定外だったが、それ以外の挨拶は比較的うまくできていると自負していた。参加者リストも頭に叩き込んで必死に勉強したのだから、失敗するわけにはいかないのだ。
この場で『完璧な妻』は確実に無理だろうが、『そこそこな妻』ぐらいの印象を残しておかねばならない。楓さんは邪魔したいと思っているかもしれないが、何とか平穏に終わらせたい。
早くこのパーティー終わってくれないだろうか。楓さんたちの存在があまりに脅威だ。出来る限りそばにいたくはない。
玲が小声で言った。
「もう帰るか」
「え? でもまだ途中でしょう」
「予想外のことが起きた。主要人物には挨拶をし終えているし、対応もよかった。今日はこれぐらいにして引きあげた方が良い」
彼は鋭い目で楓さんたちを見た。確かに、これ以上はきついものがある。でも途中で帰って大丈夫だろうか、玲のご両親の印象がさらに悪くなる気がするのだが……
そう迷って考え込んだ時だった。突然、近くで女性の声が響いたのだ。
「ちーちゃん!? どうしたのちーちゃん!」
焦ったような声だった。何だろうと自然にそちらに視線が動いた。会場の隅にいた女性が、子供に向かって大きな声で呼びかけていた。小学二、三年生ぐらいの子だろうか。綺麗なドレスを着た可愛らしい女の子なのだが、体を前かがみにして何やら様子が変なのだ。
「…………?」
私は気になり、すぐさまそっちに駆け出していった。玲が背後で私の名を呼んだが、それよりも親子の様子が気になったのだ。