日給10万の結婚
「思ってたけどお前案外洞察力鋭いのな、やっぱり職業上そうなるのか」
「案外って何よ」
「その通りだ、多分父親は、金城と結婚すればそりゃ会社は利益があるからありがたいけど、そこまでこだわってるつもりはないと思う。まあ、どうでもいいんだろ。だが母は必ず金城の娘と結婚させたいという意思が強く、それに従ってるだけだな。つまり母親を何とかしないと俺たちは認められない」
「女の敵は女っていうわけね。そっちの方が厄介なんだなあー」
私はため息をついた。あのお義母さん、手強そうだった。見るからに厳格そうだったし、頑固そうだ。自分の意見をひっくり返すことを負けに感じる人間とは多いもので、恐らくそのタイプ。
考えつつ玲に尋ねた。
「楓さんはご両親に気に入られてたんだよね? ぶりっ子に騙されてたって」
「母親とは仲良かったみたいだな、女こそあのぶりっ子に気が付きそうなもんだが、性格悪い同士気が合うのかもしれない」
「ふーん、ねえお義母さんが気に入る嫁ってどんな感じだと思う? ニコニコ穏やか系、さばさば闘う系、色々あるけど」
「そうだな……楓はどちらかというとニコニコ言うことを聞いて相手をおだてるタイプだった」
「じゃあそっちで攻めた方がいいのかなあ」
「いや、お前はそっちじゃだめだ」
きっぱり言われたので驚いて隣を見る。玲は考え込みつつ言った。
「楓と同じようなキャラしても二番煎じでインパクトはないし楓を越えられないだろう。そもそもお前はそんなキャラじゃない」
「じゃあどうするの?」
「いっそ思いきり戦って母親に勝て」
驚きで隣を二度見してしまった。戦え、っていうの? 元々貧乏で教養もなかった人間に、二階堂の奥様と戦えって?
ずっと黙って聞いていた圭吾さんが口を開く。
「あの奥様と戦え、っていうのも中々酷なことでは」
「なんのために舞香を選んだと思ってる。気が強くてどんな時も負けずガッツがあるところを見込んだんだ。楓みたいなぶりっ子ニコニコでいいわけがない、そんなのそこいらの女と変わんないしな。今まで出会ったことがない女として親たちを驚かせ、納得させるんだ」