日給10万の結婚
しばらく走った車は大きな門をくぐり、数台高級車が停められている駐車場に駐車された。私はドキドキしながら玲にエスコートされて降り、この日のために用意した手土産を持っていざ出陣した。圭吾さんは後ろから私に優しく励ましの言葉をかけてくれる。
緊張を必死に落ち着けながら、とにかく玲についていく。と同時に、あまりの家の大きさに圧倒された。想像以上のお家である。真っ白な外壁が眩しい。まるで城だ、と思った。
三人で玄関まで向かう。長いアプローチを通っていると、玄関の扉がガチャリと開いた。そして向こうにお手伝いさんであろう中年の女性が笑顔で顔を出した。気のよさそうな人である。
「玲さん、おかえりなさいませ!」
「お久しぶりです」
「ご実家にいらっしゃっるのはいつぶりでしたっけ……まあ、そちらが?」
お手伝いさんは私を見て顔を輝かせた。玲が微笑んで答える。
「妻の舞香です」
「まあまあ! お待ちしていましたよ、さあ中へどうぞ。あら圭吾さんもお久しぶりですね、お元気そうで! 皆さんお揃いですよ」
ニコニコ顔で案内してくれる。私達は中に足を踏み入れ、圭吾さんはお手伝いさんと共にどこかへ行ってしまった。そりゃそうだよなあ、一緒に食事するわけないか。でも圭吾さんがいなくなると一気に心細くなるよ、あの優しさが不足してしまうからか。
そんな私に気が付いたのか、玲が耳打ちしてくる。
「母親がいなくなった子供みたいな顔すんな」
「圭吾さんがお母さんだったらよかった」
「馬鹿かよ。ほら、行くぞ」
スリッパに履き替え、広々とした廊下を通る。玲の高級マンションも凄いと思ってたけど、さすが実家はレベルが違うなあ。迷子にならないようにせねば。