日給10万の結婚
「母さん、楓さんは今日は帰ってもら」

「いいよ、玲」

 玲を手で止める。そして私は余裕綽々の笑顔をにっこり浮かべたのだ。

 泣いたり困ったりすると思いましたかお義母さん? あなたの計算通りにはいきませんよ、このまま食事と行こうじゃないか。

「楓さん! もう一度会いたいと思っていたんです!」

「へ」

 私は声を弾ませて言った。あっちは目を丸くしている。

「だって楓さんとっても可愛らしいし完璧な女性だろうから勉強させて頂きたくて。ああ、また会えたなんて嬉しいです。お義母さま、ありがとうございます!」

 私の反応に、二人は分かりやすく目を泳がせた。そしてお義母さんは一度咳ばらいをすると、次にこういった。

「あなたにお義母さまと呼ばれるのは」

「あ! じゃあ何にしましょう、ママ派ですか? いっその事マミーとかにしますか?」

「は?」

「呼び方を指定してください。私はそれに従いますよ」

 マミーは頬をぴくッとさせた。そして私から視線を逸らし、冷たい声で言った。

「まあ、とりあえずはお義母さまでもいいでしょう、いつまで使えるか分かりませんから」

「分かりました! ええ、いつでも呼び方変えてもいいですよ。変えてみたいときはおっしゃってくださいね」

 私の元気いっぱいの対応を見て、隣の玲が小さく笑った。それをお義母さんは睨みつけている。ずっと黙っていたお義父さんが流れを切って声を上げた。
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