日給10万の結婚
「しょうがないですよ! 舞香さんがそれだけ魅力的だってことです。舞香さんって看護師さんなんでしょう? あれかっこよかったです~私には出来ないなあ。だって、看護師さんって、人の排泄物だったりも触らなきゃいけないんでしょう? この前だって吐いたものを……無理だなあ」
出た、と思った。今日どこかで必ずあの事を話題にされるだろうと思っていたのだ。だがまさか、元婚約者からだとは思わなかったが。
なるほど、性格が悪い、か。確かに救命行為を褒めてくれた玲とは、比べようがないほど悪いようだ。一緒にして玲に申し訳なかったな、こいつは大魔王レベルだ。
私は目を丸くして、申し訳なさそうに言った。
「楓さん……これから食事だというのに、排泄物、だなんて。あの、あまり言わないほうがいいと思いますよ? 家族だけとはいえ、品性が疑われてしまいます」
相手は分かりやすくカッと顔を赤くさせ、目を吊り上げた。いやいや、だって本当の事じゃん。それくらい、畑山さんに教わらなくたって子供でも知ってるよ。私を陥れたくて我慢出来なかったんだろうな。
そんな彼女をフォローするように、マミーが口を開いた。
「それだけあの時の事が衝撃的だったのです。そりゃ、人の命を救ったのは素晴らしい事でしたが、あなた靴を脱ぎ捨てて裸足になり、更にはドレスだというのに大きく足を広げたりして……品性がないのはそちらの方です」
楓さんは分かりやすく笑った。これに反応したのは玲だった。
「ではお母さんはあのまま放っておけばよかったと?」
「そんなことを言ってはいません。人の目に届かない場所に移動したり、他の人に任せればよかったのです」