日給10万の結婚
「なんてことを! 口の利き方に気を付けなさい! その女と結婚してから特にひどくなりました、影響を受けているんですよ。だから楓さんと結婚なさいと言ったでしょう!」
「心に思っていた事を今までは我慢していただけです。俺は舞香という人間と出会って、ようやく正直になれただけです。やっと一人の人間として自立出来たんですよ、むしろ舞香に感謝してください」
「玲、ハッキリ言います、こんな女に騙されていないで離婚なさい。楓さんと再婚すれば許してあげます。楓さんもそれでいいとおっしゃってくれてるんですよ!」
「万が一舞香と離婚したとしても、楓さんと結婚はしません、俺は舞香以外の人を娶りません」
二人の言い争いがヒートアップしていく。おお、こんなに激しくなるとは思っていなかった。少し困ってしまい、私も額に汗を掻く。口を挟む隙間がまるでない。
少し声を荒げて止めたのはお義父さまだった。二人は渋々黙る。しばらく気まずい沈黙が流れた。私は黙ってシャンパンで乾いた喉を潤した。
こりゃ凄い。私は本当に一年で、この人たちに受け入れられるのだろうか。
しばらく経って、次の料理が運ばれてきた。玲が落ち着きを取り戻した声で話し出す。
「先日のパーティーで、舞香の活躍を賞賛してくれる方々は多かったです。あなた方のように苦言を言う人たちはわずかでしょう。吉岡様からは深い感謝の意を頂いておりますし、舞香の活躍は素晴らしかった。二階堂のイメージアップにもつながった、これは紛れもない事実です」
三人は何も言い返せなかった。不貞腐れたように食事を進め、沈黙が流れる。料理は次々運ばれてきて、さすが一流のものばかりだが、もはや味は分からない。
気まずい中黙々と食事は続いた。ついにデザートにまでたどり着いた時、黙っていた楓さんが口を開いた。
「私はずっと玲さんをお慕いしていました。結婚されたと聞いてショックでしたが、この気持ちはすぐに消えることはありません。いつか、また私の方を向いてくださったら......という思いを捨てられないんです」
健気な声だった。両親は哀れんだ目で楓さんを見る。玲を見てみると、げんなりとした顔をしていた。ああ、声が直接聞こえてくるようだ。『また私の方を向くって、一度も向いた事ねえよ』。
お義母さまは言う。
「お前たちに離婚の意思がないことは分かりました。でも私たちも認めるわけにはいきません。二階堂の人間として相応しいのか、今後もじっくり見させて頂きます。まあ、どんなに取り繕っても中身は親すらいない人間ですから、限界はすぐそこでしょうけどね」
吐き捨てるように言われたそのセリフに、怒りが沸いた。親すらとはなんだ。私だって、好きであんな親の元に生まれてきたわけではない。
クズみたいな親のそばで、それでも必死に知恵を絞り、努力して生きてきたのだ。なぜそんなことを言われねばならない。
「お義母さま」
「心に思っていた事を今までは我慢していただけです。俺は舞香という人間と出会って、ようやく正直になれただけです。やっと一人の人間として自立出来たんですよ、むしろ舞香に感謝してください」
「玲、ハッキリ言います、こんな女に騙されていないで離婚なさい。楓さんと再婚すれば許してあげます。楓さんもそれでいいとおっしゃってくれてるんですよ!」
「万が一舞香と離婚したとしても、楓さんと結婚はしません、俺は舞香以外の人を娶りません」
二人の言い争いがヒートアップしていく。おお、こんなに激しくなるとは思っていなかった。少し困ってしまい、私も額に汗を掻く。口を挟む隙間がまるでない。
少し声を荒げて止めたのはお義父さまだった。二人は渋々黙る。しばらく気まずい沈黙が流れた。私は黙ってシャンパンで乾いた喉を潤した。
こりゃ凄い。私は本当に一年で、この人たちに受け入れられるのだろうか。
しばらく経って、次の料理が運ばれてきた。玲が落ち着きを取り戻した声で話し出す。
「先日のパーティーで、舞香の活躍を賞賛してくれる方々は多かったです。あなた方のように苦言を言う人たちはわずかでしょう。吉岡様からは深い感謝の意を頂いておりますし、舞香の活躍は素晴らしかった。二階堂のイメージアップにもつながった、これは紛れもない事実です」
三人は何も言い返せなかった。不貞腐れたように食事を進め、沈黙が流れる。料理は次々運ばれてきて、さすが一流のものばかりだが、もはや味は分からない。
気まずい中黙々と食事は続いた。ついにデザートにまでたどり着いた時、黙っていた楓さんが口を開いた。
「私はずっと玲さんをお慕いしていました。結婚されたと聞いてショックでしたが、この気持ちはすぐに消えることはありません。いつか、また私の方を向いてくださったら......という思いを捨てられないんです」
健気な声だった。両親は哀れんだ目で楓さんを見る。玲を見てみると、げんなりとした顔をしていた。ああ、声が直接聞こえてくるようだ。『また私の方を向くって、一度も向いた事ねえよ』。
お義母さまは言う。
「お前たちに離婚の意思がないことは分かりました。でも私たちも認めるわけにはいきません。二階堂の人間として相応しいのか、今後もじっくり見させて頂きます。まあ、どんなに取り繕っても中身は親すらいない人間ですから、限界はすぐそこでしょうけどね」
吐き捨てるように言われたそのセリフに、怒りが沸いた。親すらとはなんだ。私だって、好きであんな親の元に生まれてきたわけではない。
クズみたいな親のそばで、それでも必死に知恵を絞り、努力して生きてきたのだ。なぜそんなことを言われねばならない。
「お義母さま」