日給10万の結婚
「家も底辺みたいだし、いいところが何も見つからないんですけど」
鼻で笑いながらそう言われた。別人のようだ、あの耳に触る高い声はどこへ行ったのだ、喉の鍛え方凄そう。
「玲は人を外見で判断する人じゃないってことですね。やっぱり性格、でしょうか」
ニコリと笑って答えた。これは本当の話だ、玲は楓さんの性格が嫌って言ってたんだからね。涼しい顔をしている私が気に入らないのか、彼女は口をゆがめた。あまり二人きりでいるのはよくないと考え、すぐさまそこから立ち去ろうとしたが、引き止めたのは向こうだった。
「でもぉー、性格だけじゃあねー玲さん満足してるのかしら? だって夜はあれだけ私を可愛がってくださってたのに。急にそんな貧相な体相手じゃ、ねえ」
驚きのあまり、ついスルー出来ず振り返ってしまった。向こうは面白そうに笑っている。私がショックを受けていると思ったようだ。
「だって婚約者だったんだから、そりゃそういう関係もありますよ。知らなかった?」
目を見開いて彼女の赤いリップを見つめた。
信じられない、と思った。
私が驚いているのは、彼女と玲が体の関係があったという話なんかではなく、そんな下世話な事を平気で言いだすこの女の品性の無さである。いいとこのお嬢様とは到底思えない。影山さんに言ったら卒倒して倒れそう。
その上、だ。今の話は百パーセント嘘だ、と断言できる。あれだけ楓さんを嫌がって怖がっていた玲が、いくら彼女が豊満なバストの持ち主とはいえ、手を出すとは到底思えない。そうしたら婚約の話は引き返すことが出来なくなるだろう。玲はそこまでアホじゃない。
一体何でそんな嘘を吐くんだろう、と考える。まあ、この話がきっかけで私と玲がゴタゴタしてくれればいいとでも思ってるんだろうか。でもそんなの、本人に聞けばすぐ分かることじゃないか。ああでも、普通の女の子なら、疑心暗鬼になったりしてしまうものなのかなあ。普通じゃなくて悪かったな。
私は落ち着いた声で答えた。
「楓さん。私にそういった嘘は通用しませんよ」
「は、はあ?」
「玲への侮辱でもあります。気を付けてください」
「何がよ、玲さんのお尻にホクロあるの、知ってるんだからね!」
勢いよくそう言い返してきたので、少し考える。うーん、なるほど、そういう情報も持ってたから、さっきの話に信憑性が増すと思っていたのか。確かにそんな部分のホクロ、普通深い仲じゃなきゃ知らないもんなあ。
ピンときた。別に男女の関係じゃなくても、知りえる情報じゃないか。
お義母さまだ。
あまり息子の世話はしてなかったようだが、それでも珍しい場所のホクロぐらいは把握しているだろう。さてはそこから情報が流れたんではないだろうか? そうだとしたら、あのおばさんも大概だぞ。
こうなったらカマを掛けてやろう、と思い、私は微笑んで菩薩の笑みを浮かべてみた。
「ふふ、楓さん。聞いたことありますよ、玲のホクロ」
「聞いたことある?」
「子供の頃にあったみたいですけど、大人になったら消えたんですって。知りませんでした?」
そういった途端、向こうの顔が真っ赤に染まりあがった。あら、こっちの憶測は正解だったみたい。実際のところ、玲のケツに今もホクロがあるかどうかは知らないけどね。
鼻で笑いながらそう言われた。別人のようだ、あの耳に触る高い声はどこへ行ったのだ、喉の鍛え方凄そう。
「玲は人を外見で判断する人じゃないってことですね。やっぱり性格、でしょうか」
ニコリと笑って答えた。これは本当の話だ、玲は楓さんの性格が嫌って言ってたんだからね。涼しい顔をしている私が気に入らないのか、彼女は口をゆがめた。あまり二人きりでいるのはよくないと考え、すぐさまそこから立ち去ろうとしたが、引き止めたのは向こうだった。
「でもぉー、性格だけじゃあねー玲さん満足してるのかしら? だって夜はあれだけ私を可愛がってくださってたのに。急にそんな貧相な体相手じゃ、ねえ」
驚きのあまり、ついスルー出来ず振り返ってしまった。向こうは面白そうに笑っている。私がショックを受けていると思ったようだ。
「だって婚約者だったんだから、そりゃそういう関係もありますよ。知らなかった?」
目を見開いて彼女の赤いリップを見つめた。
信じられない、と思った。
私が驚いているのは、彼女と玲が体の関係があったという話なんかではなく、そんな下世話な事を平気で言いだすこの女の品性の無さである。いいとこのお嬢様とは到底思えない。影山さんに言ったら卒倒して倒れそう。
その上、だ。今の話は百パーセント嘘だ、と断言できる。あれだけ楓さんを嫌がって怖がっていた玲が、いくら彼女が豊満なバストの持ち主とはいえ、手を出すとは到底思えない。そうしたら婚約の話は引き返すことが出来なくなるだろう。玲はそこまでアホじゃない。
一体何でそんな嘘を吐くんだろう、と考える。まあ、この話がきっかけで私と玲がゴタゴタしてくれればいいとでも思ってるんだろうか。でもそんなの、本人に聞けばすぐ分かることじゃないか。ああでも、普通の女の子なら、疑心暗鬼になったりしてしまうものなのかなあ。普通じゃなくて悪かったな。
私は落ち着いた声で答えた。
「楓さん。私にそういった嘘は通用しませんよ」
「は、はあ?」
「玲への侮辱でもあります。気を付けてください」
「何がよ、玲さんのお尻にホクロあるの、知ってるんだからね!」
勢いよくそう言い返してきたので、少し考える。うーん、なるほど、そういう情報も持ってたから、さっきの話に信憑性が増すと思っていたのか。確かにそんな部分のホクロ、普通深い仲じゃなきゃ知らないもんなあ。
ピンときた。別に男女の関係じゃなくても、知りえる情報じゃないか。
お義母さまだ。
あまり息子の世話はしてなかったようだが、それでも珍しい場所のホクロぐらいは把握しているだろう。さてはそこから情報が流れたんではないだろうか? そうだとしたら、あのおばさんも大概だぞ。
こうなったらカマを掛けてやろう、と思い、私は微笑んで菩薩の笑みを浮かべてみた。
「ふふ、楓さん。聞いたことありますよ、玲のホクロ」
「聞いたことある?」
「子供の頃にあったみたいですけど、大人になったら消えたんですって。知りませんでした?」
そういった途端、向こうの顔が真っ赤に染まりあがった。あら、こっちの憶測は正解だったみたい。実際のところ、玲のケツに今もホクロがあるかどうかは知らないけどね。