日給10万の結婚
「すっげえ世界……信じられない」

「私もついてくのに必死だよ」

 頬杖をついてぼんやり思う。だが勇太はほっとしたように言った。

「でも肝心の二階堂さんがいい人そうでよかった。俺はそれが一番心配だったよ、だって急に結婚ってさ。話に聞く限り大事にされてるみたいだし、ちゃんと一線引いてるようで何より」

「一緒に寝ても貧乳相手には何も思わないんだってさ」

「ははは、言えてる!」

「殺されたいのか?」

「あと姉ちゃん寝言うるさいからなおさらだと思う」

「え、まじ? 私寝言うるさいの!? もしかして、だから最近玲は一緒に寝ないのかな……睡眠の妨げになってたかも」

 玲は結局、私の助言も無視してあまり寝ていないようだ。彼と一緒にベッドで並んで寝たのは結構前のことで、私はあの広いベッドに大の字で寝る日々を送っているのだ。

 勇太が首を傾げた。

「え、最近は寝てないんだ?」

「ていうか、私が寝た後に来てると思うんだけど。私が寝た後に来て、私が起きる前に起きてる。仕事忙しいみたい。いつからだっけ、えーと、ああパーティーが終わってからは一度も見てないなあ。金持ちも大変だよね、でも体壊さないか心配だよ」

 ため息をついて玲を思う。私には早く寝ろ早く寝ろっていうくせに、自分は遅くまで寝ないし朝早く起床してる。健康状態大丈夫なのかな。

 だが勇太は、何か考えるようにして腕を組んでいた。そして恐る恐る言う。
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