夫婦ごっこ
「あはは。そんなことで先輩風を吹かせるんですか?」
「はい。先輩なのでいつでも頼ってください。私もあなたも片想いのプロですが、プロだってときには弱音を吐きたくなりますから」
「片想いのプロ……ふふ、随分と不名誉な称号ですけど、まさしくその通りですね。私が弱音を吐いたら、生方さんも私に弱音を吐いてくれますか? 後輩ですけど、頼るばかりじゃ嫌ですから」
「奈央さんがいいと言ってくれるなら」
「じゃあ、つらいときは頼らせてください。生方さんも私を頼ってください」
「はい、よろしくお願いします。でも、私としてはつらくないときでも、またこうしてお話したり、謎解きに一緒に参加できると嬉しいです」

 奈央のつらい気持ちを察して世話を焼いてくれただけかと思ったが、趣味で意気投合したという気持ちは義昭も同じらしい。最初に連絡先を交換したのだって、本当に義昭とならまた一緒に参加したいと思ったからに他ならない。それを義昭からもはっきりと望んでもらえて、奈央はとても嬉しかった。

「それはもちろんです! むしろそれがメインでしょう。どうせなら今次の計画立てちゃいます? まだ行ってないイベントあれば一緒に行きましょうよ」
「ははは、いいですね。ぜひ一緒に行きましょう。こんなに素敵な趣味友達ができるとは思わなかった。これからよろしくお願いしますね」


 それから二人は本当に趣味友達として仲を深めいった。三ヶ月も経てば、謎解きイベントには必ず一緒に参加するくらい仲よくなっていたし、イベント後はいつも飽きるまでおしゃべりをして過ごしたから、義昭はもう奈央の中で一番親しい人物にまでなっていた。

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