夫婦ごっこ
「今日のは惜しかったですねー。もうちょっとでクリアできたのに」
「奈央さんは結構負けず嫌いですよね。本当に悔しそう」
「そうですよ? だから、リベンジ付き合ってくださいね。次どれにします?」
「次は奈央さんが行きたいやつにしましょう。どれでも付き合います」

 こんなふうにその場で次の約束を取りつけるのがもはや当たり前になっている。二人で計画を立てるのももう慣れたもので、二人はサクッと次のイベント参加の日程を取り決めた。そうして予定を決めてしまえば、まただらだらと二人でおしゃべりをするのが常なのだが、この日はいつもと違っていた。

「奈央さん、今日は大事な話があるんです。少し場所を移動してもいいですか?」
「え? はい」

 素直に義昭についていけば、初めて出会ったときに連れられてきた公園に到着した。あのときと同じようにベンチに促される。これは人には聞かれたくない話、つまりは想い人に関する話がしたいのだろうと奈央は予測した。

「突拍子もないことを言いますが、私が悩みに悩み抜いて出した結論なので、ちゃんと聞いてください」
「はい」

 彼と彼のお姉さんとの間に何かあったのかもしれない。どんなことを聞かされても絶対に否定するようなことだけはしないでおこう。そう心の中で誓った奈央だが、義昭が次に述べた言葉は予想の遥か斜め上をいくものだった。

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