夫婦ごっこ
「しょうがないですね。よろしくお願いします」
「ありがとうございます、奈央さん! 人生で初めての恋人ができました」
「同じくです。生方さん、随分楽しそうですね」
「前段階だとしても奈央さんに手を取ってもらえてとても嬉しいですから。奈央さんのことちゃんと大事にします。たくさんデートもしましょうね」

 義昭は本当に嬉しそうな顔をしている。これはごっこのはずなのに、まるで本当に告白をして成功した人みたいだ。

「本当の恋人になったみたい」
「ごっこはなりきるものですよ? 本当に楽しまないと。それに恋愛感情がないこと以外、普通の人と同じようにして問題ないじゃないですか。だから、奈央さんもやりたいこと何でも言ってくださいね。憧れていたこと一緒にやりましょう」

 義昭があまりにも楽しそうで拍子抜けしてしまう。義昭の随分と軽いノリに、今までずっと悩んでいたのが馬鹿みたいに思えてきた。なんだかもう難しく考えたほうが損な気がしてきて、奈央はどうせならとことんこのごっこ遊びを楽しんでやろうと思った。

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