夫婦ごっこ
「奈央さん、おかえり」
「うー、もう何これ。毎日幸せすぎるんだけど」
「はは、急にどうしたの？」
「だって、毎日優しい旦那さんが出迎えてくれる。一緒にご飯も食べてくれるし、労ってくれる。こんなのもう天国じゃないですか」

　義昭の仕事は今の時期には余裕があるらしく、奈央のほうが帰りが遅い。いつも義昭が夕飯を作って、奈央の帰りを待っていてくれる。

　こんなふうに誰かに食事を用意してもらったり、それを一緒に食べたり、帰りを誰かに出迎えてもらったりするのは本当に久しぶりで、毎日が本当に幸せだ。信頼のおける家族がそばにいてくれるというこの状況にずっと心が満たされている。

「大げさだよ。今は僕のほうが余裕あるからね。僕が忙しくなったら、奈央さんが出迎えてくれる？」
「うん。美味しいご飯作って待ってる」
「それは楽しみだな。奈央さんがいてくれたら、忙しくても頑張れそう」
「私も義昭さんのおかげで頑張れてるよ。ありがとう」
「どういたしまして。手洗っておいで？　すぐご飯準備するから」

　奈央は「はーい」と返事をしてから、うがい、手洗いを済ませ、部屋着に着替えてから義昭と一緒に夕飯を食べた。こういう如何にも家族なやりとりが奈央は楽しくてたまらない。義昭という拠り所があるおかげで日々が充実している。一人暮らしをしていた頃よりも遥かに心の余裕が生まれていて、仕事のパフォーマンスまで上がったほどだ。
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