夫婦ごっこ
　週末には一緒に趣味の時間を楽しむようにもなったから、家にいる間は義昭とほとんどずっと一緒にいる。せっかく各自の自室を用意したというのに、今は身支度をするときにしかほとんど使っていない。

　当初、二人で約束をしているとき以外は休日は自由に過ごそうと話していたのだが、奈央がリビングで過ごしはじめたのをきっかけに、休日も二人で一緒に過ごすのが定番になってしまったのだ。


　そのきっかけというのも二人に共通する趣味だった。

　その日、奈央はリビングでパズル雑誌とにらめっこをしていた。いろんなルールのパズルがたくさん載っているその雑誌は隔月で発売されていて、奈央はほとんど欠かさず購入している。ただ、謎解きなどの他の趣味もあるし、平日は仕事であまり時間を取れないから、解き終わっていない雑誌が溜まっていく一方で、一人暮らししていた頃は暇さえあればこの雑誌と向き合っていた。

　義昭との暮らしが始まる際、奈央は解き終わっていない雑誌はすべて新居に持ってきており、自室で少しずつこれを解いていた。でも、よく考えれば、リビングにあるテーブルのほうが広いということに気づき、雑誌と筆記具を持ってリビングに移動してきたわけだ。そうしてリビングで一人パズルに夢中になっていたら、義昭が後ろから奈央の手元を覗き込みつつ声をかけてきた。
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