夫婦ごっこ
電車で移動し、二人の住む家の最寄り駅まで到着した二人は、また自然と手を繋いで自宅までの道を歩きはじめた。
住宅街のほうに入っていくと人通りもそこまで多くない。たまにすれ違う人がいるくらいだ。あまり人目がなく、隣には心を許せる義昭がいるからか、奈央はつい気が緩んでしまって、繋いだ手を大きめに振りながらうっかり好きな歌を口ずさんでいた。
ほとんど無意識にやってしまっているから、どのくらいそれをしていたのかはわからない。向かいから人がやってくるのが見えたときに、自分が歌っていることに気づいて奈央は慌てて口をつぐんだ。
「はあ……またやってしまった……」
奈央は義昭と歩いているときによくこれをやってしまうのだ。義昭といるといつも楽しくて、ついつい歌を歌いたくなる。でも、外でやるのはやはりよくないと奈央が一人反省していれば、横からクスクスと笑い声が聞こえてきた。これもいつものことだ。奈央がやらかすたびにこうやって笑ってくる。
「もう笑わないでください」
「すみません。奈央さんがあんまりかわいいもんだから」
「義昭さんのせいですよ?」
「僕のせいなんですか?」
「だって、義昭さんの隣は居心地がよすぎるんだもん。無意識にああなるんです」
「それは僕に心を許してくれてるってことだよね? だったら、そのままでいてほしいな。奈央さんが気を抜いてる姿好きだから」
「なんかずるい。義昭さんも気を抜いたところ見せてください」
義昭はいつだってスマートだ。彼がダメなところなんて一度も見たことがない。もっと義昭にも自由に振る舞ってほしいと奈央は思う。
住宅街のほうに入っていくと人通りもそこまで多くない。たまにすれ違う人がいるくらいだ。あまり人目がなく、隣には心を許せる義昭がいるからか、奈央はつい気が緩んでしまって、繋いだ手を大きめに振りながらうっかり好きな歌を口ずさんでいた。
ほとんど無意識にやってしまっているから、どのくらいそれをしていたのかはわからない。向かいから人がやってくるのが見えたときに、自分が歌っていることに気づいて奈央は慌てて口をつぐんだ。
「はあ……またやってしまった……」
奈央は義昭と歩いているときによくこれをやってしまうのだ。義昭といるといつも楽しくて、ついつい歌を歌いたくなる。でも、外でやるのはやはりよくないと奈央が一人反省していれば、横からクスクスと笑い声が聞こえてきた。これもいつものことだ。奈央がやらかすたびにこうやって笑ってくる。
「もう笑わないでください」
「すみません。奈央さんがあんまりかわいいもんだから」
「義昭さんのせいですよ?」
「僕のせいなんですか?」
「だって、義昭さんの隣は居心地がよすぎるんだもん。無意識にああなるんです」
「それは僕に心を許してくれてるってことだよね? だったら、そのままでいてほしいな。奈央さんが気を抜いてる姿好きだから」
「なんかずるい。義昭さんも気を抜いたところ見せてください」
義昭はいつだってスマートだ。彼がダメなところなんて一度も見たことがない。もっと義昭にも自由に振る舞ってほしいと奈央は思う。