夫婦ごっこ
「義昭さん、本当にこれ気持ちいい?」
「うん、気持ちいいよ。まあ、それ以上に幸せになるって言ったほうが正しいかな」
「肩もみで?」
「奈央さんに労わってもらってるっていう今の状況に幸せな気持ちになるんだよ」
「あー、それはわかるかも。義昭さんが何かしてくれると私も嬉しくなる」

 自分のために行動してもらえるととても嬉しい。行動そのものというよりも気持ちが嬉しいのだ。でも、相手のために何かしてあげるのはもっと嬉しいかもしれない。本当に幸せそうな表情をしている義昭を見ているとそういう気持ちが沸々と湧いてくる。

「僕は奈央さんがいてくれるだけでも十分幸せなんだけどね。明日はお留守番だからちょっと淋しいな」

 明日は由紀に招待されて由紀の家へ行くことになっている。今回は奈央一人で行くから、義昭はお留守番というわけだ。

「ふふ。淋しいってほんのちょっと出かけるだけなのに」
「もう一緒にいるのが当たり前だから一人だと淋しくなるんだよ。奈央さん、明日は何時頃出るの?」
「お昼ご飯食べたらかな。帰りは何時になるかわからないんだけど、夕飯前には帰ってくると思うよ」
「わかった。姉妹水入らずで楽しんできてね」
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