熱情滾るCEOから一途に執愛されています~大嫌いな御曹司が極上旦那様になりました~
「ねえ、ここ、成輔さんは連れてきたことがあるでしょ」

注文を終えると、百合がいたずらっ子のような顔で私を覗き込んでくる。ぎくりとした。

「うん、一度」

かつて成輔が京都に来たとき、普段私が食べている店に行きたいと言ったのだ。それで仕方なく連れてきた覚えがある。

「成輔さんが言ってたことがある。お姉ちゃんの行きつけの洋食屋は学生が多くて全部デカ盛りだったって。お姉ちゃんが美味しそうに山盛りのナポリタンを食べている姿が可愛かったって」

私はお冷をごくんと飲み込み、それから黙った。
百合はそれをどんな気持ちで聞いていたのだろう。

今なら聞けるだろうか。百合は今でも成輔が好きなの? 
どうして私と成輔の結婚を応援したの?

私が長く黙っていたせいだろうか。百合は到着したグラスワインをひと口飲んで、私をまっすぐ見つめた。

「あのね、お姉ちゃん。私、ずっと気になってたんだけど、成輔さんと喧嘩してる?」
「喧嘩というほどでは……」
「しかも、それに私が関わってる?」

厳密に、百合は直接関わっていない。だけど、百合の気持ちは……。
答えない私に、百合がはーと大きなため息をついた。

「もしかしてなんだけど、お姉ちゃんは私が成輔さんのことを好きだとか誤解していない?」

ドキッとして顔をあげた。私の反応に百合がいっそう深いため息をついた。
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