熱情滾るCEOから一途に執愛されています~大嫌いな御曹司が極上旦那様になりました~
「やっぱり。ちょっと前に、お母さんが余計なことを言ったみたいだなとは思っていたのよ。私の方が成輔さんの妻に相応しいし、私が成輔さんを好きだった、みたいなこと言ったでしょ」
「言ったけど……私も百合の方が成輔みたいな男性にはふさわしいと思うし、百合が成輔を好きなら……」
「だから、それが違うの!」

百合がめずらしく苛立った声をあげた。

「お母さんはああいう人だから、お姉ちゃんが外で自由にしているのが気に入らないだけ。私をだしにしただけ。私は成輔さんのことは好きではありません!」

言葉の勢いにあっけにとられる私に、百合は続けて言う。

「正確に言えば、私だって昔々は成輔さんが好きだったよ。初恋だったかもしれない」

ぎょっとする私を、ちょっとだけ微笑んで見つめてくる。

「お姉ちゃんが家元は継がないって言ったとき、中学生だった私は思ったの。それなら家元は私で、成輔さんのお嫁さんも私だって。親同士でも当時、そういう話になったんだと思う。だけど、すぐに成輔さんがひとりでうちに来たのよ」

成輔が? 
当時大学生だった成輔は、私が家元を継がないと言ったときも穏やかに頷いた程度だった。私の知らないところでうちに来ていた?

「私はお茶を出す振りをしてお父さんとの話に聞き耳をたててた。そうしたら成輔さん言うの。『俺が結婚したいのは葵ちゃんです。風尾グループとして今後も院田流のご支援は続けていきたいと思っていますので、葵ちゃんとの婚約の話はなかったことにしないでください』って。完璧に失恋だと思った。成輔さんがお姉ちゃんを好きなのは知っていたけど、それは家元になる人だから大事にしているんだと思ってた。違ったんだなあって」
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