熱情滾るCEOから一途に執愛されています～大嫌いな御曹司が極上旦那様になりました～
「父が残念がっていました。結局風尾社長と酒を酌み交わす機会がなかったと」
「成輔たちの結婚式で一緒に飲んださ」
「つれないなあ。成輔もなんとか言ってくれよ。僕も父も、異国で小さな仕事をコツコツとこなしているのに」

言葉には笑みが含まれているのにとげとげしい。やはり小沢康太というこの人が、成輔やお義父さん、風尾グループにわだかまりを持っているのは間違いなさそうだ。
成輔の穏やかな声が聞こえる。

「康太と伯父さんがオーストラリアで風尾グループの仕事に関わりたいって希望したから、俺と親父はそちらの会社をひとつ買収したんだけどね」
「元からその予定だっただろうに、うまく言うなあ。うちの父は、風尾グループのために転職したんだよ？」

不穏な空気になってきた。椅子を引く音が聞こえ、お義父さんが言った。

「伯父さんに渡したいものがあったんだった。少し待っていてくれ」

空気を変えるためなのか、本当に渡したいものがあるのか。お義父さんがリビングから出ていく音が聞こえ、廊下や階段を進む音が遠く響いていた。

「僕と父がオーストラリアに戻ると思って、ホッとしているだろ、成輔は」
「なんだか、被害妄想が激しいね」

小沢康太の言葉に成輔はいつもどおりの口調で答えている。
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