熱情滾るCEOから一途に執愛されています~大嫌いな御曹司が極上旦那様になりました~
「叔母さんに伝言は? きみにとっては大事なママだろう」
「特にないかな」
「まったく親子そろってケチ臭いし、冷たい奴らだ。叔母さんはこの家を捨てて正解だね」

さすがに私が怒りで立ち上がりそうになった。いくら成輔の従兄だからって調子に乗り過ぎだ。
成輔のお母さんは奔放な性格ゆえに出奔したと聞いている。部外者同然の私が言うのもなんだけれど、成輔とお義父さんのせいみたいに言うのはおかしい。置いて行かれた幼い成輔が心に負った傷さえも知らないくせに。

布団からがばっと上半身を起こしたところで、さらに声が聞こえた。

「そうそう、成輔。きみはなんであの地味な女性の方を妻にしたの?」

地味な女性。妻。それって私のことか。
そこだけはなんとも腑に落ちて、ぴたっと止まる。

「院田流っていう華道家の娘なんだろう。しかも跡を継がなかった方。跡を継いだ妹の方が華やかで美しいじゃないか。世界に羽ばたく風尾グループの次期トップの妻が日本を代表する美人華道家。すごいネームバリューになるのに、どうして地味でダサい方を選んだのかなあ」

嘲笑する声が響く。
自分のことを言われるのは別に気にしない。
しかし、私には危機感があった。こういうときに怒り出すのは私のことを愛している人間だ。

「康太、お喋りが過ぎるな」

低くドスの利いた声は滅多に聞けない成輔の怒声だった。
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