熱情滾るCEOから一途に執愛されています~大嫌いな御曹司が極上旦那様になりました~
次に記憶が戻ったとき、私は一瞬自分がどこで何をしているのか完全に忘れていた。
天井を見て、重くて痛い身体を感じ、ハッとした。
お産は終わったはず。それともあれは夢?

「葵? 目覚めた?」

私を覗き込んでいるのは成輔だ。その向こうに両親の顔も見える。

「赤ちゃんは?」

大きく膨らんでいたお腹はしぼんでいる。赤ちゃんはどこにいるのだろう。

「今、新生児室で預かってもらってる。きみはお産の後、半日くらい眠っていたんだ」
「そうだったんだ」
「輸血するまでじゃなかったからよかったんだけど、貧血と疲労みたいだよ。意識がなくなったときは、分娩室が一瞬騒然としたけど」

それはさぞ心配をかけたことだろう。
成輔がずっと私の手を握っていることに今更気づいた。きゅっと握り返す。

「成輔、お父さん、お母さん、心配かけてごめんね。おかげ様で赤ちゃん産めました」
「お疲れ様。頑張ってくれてありがとう、葵」

後ろで母が涙を拭いている。父の表情も安堵で緩んでいた。

間もなく看護師さんに抱かれて赤ちゃんがやってきた。やっとまともに顔が見られると思ったら、いきなり腕に抱っこさせられ思い切り動揺してしまった。
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