熱情滾るCEOから一途に執愛されています~大嫌いな御曹司が極上旦那様になりました~
忙しい仕事だろうがなんだろうが、約束の時間に来られないなら私の優先度は低いに違いない。
おそらく相手方も乗り気ではないのだろう。それなら、このお話は即破談。その方向でお願いしたい。

その時だ。中居さんが姿を現し、待ち人が来たことを告げる。どうやら、たらこと鮭のおにぎりはお預けらしい。おとなしく料亭の懐石でもいただこう。
しかし、和室に入ってきた“待ち人”を見て、私は食欲も何もかも吹っ飛んで固まってしまった。

「風尾(かざお)……成輔(せいすけ)……」

思わず相手の名前をつぶやくと、母が小さく「成輔さんでしょ」とたしなめ、私のふとももを再びぺんと叩く。
風尾成輔は私を見てにこっと微笑んだ。
つややかな焦げ茶色の髪に、同じ色の瞳。眉目秀麗とは彼のためにある言葉ではというくらいの男ぶり。

「葵ちゃん、久しぶり。俺がお見合い相手で驚いた?」

私は言葉もなく、彼を凝視した。

驚いたに決まっている。
成輔がここにいるなんておかしい。

この男は、私の妹と結婚するはずなのだから。


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