熱情滾るCEOから一途に執愛されています~大嫌いな御曹司が極上旦那様になりました~
成輔がそれによって、どんな反応をしていたか、私はまるで覚えていないのだ。
そのことに、今更ながら鈍痛のような胸の苦しさを覚えた。

「成輔さんはあの頃からお姉ちゃんを想っていたのかな」

百合が言い、私は黙った。
打算だ、思い違いだ。そんなことを言っている自分は、まず成輔に向かい合っていない。

私に拒絶された成輔がどんな表情をしていたかすら覚えていないなんて、相手に興味がなさすぎだ。敬意を持って、尊重してこなかった証拠だ。
そんな私に、成輔は結婚を申し込んでいる。

このまま、なあなあにするの? 彼の気持ちを聞かなかったことにして、拒絶するの? 
私はきっと、また成輔がどんな表情で私を見ていたかを忘れてしまう。

「百合。八宝菜なんだけどさ」
「うん、お姉ちゃんの分、取っておこうか」

こんな会話もツーカーでできる妹の存在をありがたく思いながら、私は顔をあげた。

「ちょっと成輔と話してくるわ」
「わかったよ」
「成輔の顔見て、結婚の話してくる」

私は踵を返し、駅に向かってもと来た道を戻りだした。

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