熱情滾るCEOから一途に執愛されています~大嫌いな御曹司が極上旦那様になりました~
私は嘆息して首を振った。

「駄目。花束にするならお店の人がやるだろうし、そこに口出しするなんて野暮なことはできない。買った花を私が花束にしたり生けたりというのも、立場上やりたくない」

院田流の華道家じゃないとしても、院田の名前を背負っている身で軽率なことはしない方がいい。
私のちょっとした厚意で、父や妹に迷惑がかかる可能性もある。今谷やその家族が変な人じゃないとしても、こういった依頼は一律で避けている。

「ごめん。ちょっと気軽に頼み過ぎた」

今谷が目に見えて反省という顔になる。こういうところは素直な性質だと思う。

「いいよ。気にしないで」
「家業にしていることだもんな。無神経だった」

あからさまにしょんぼりされてしまうとこちらも困る。

「ええと、どんな花を飾るかだけならアドバイスできるよ」
「本当に?」

今谷がぱっと顔をあげた。

「次の土曜に遊びに来るんだって。だから、金曜の夜に花を買って帰りたいんだ。買うのだけ付き合ってくれる?」
「……わかった。それくらいなら」

今谷は一転明るい笑顔になり、私の何倍も速いスピードでカツカレーを平らげると、「また連絡するー」と食堂を去っていった。
私は伸び切ったきつねうどんの残りをすすりながら、金曜の夜の件を成輔に報告すべきか考えていた。

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