熱情滾るCEOから一途に執愛されています~大嫌いな御曹司が極上旦那様になりました~
「今は……まだ結婚は……考えられないかな、と……」
「葵!」

母が厳しい声をあげた。あとでこの一瞬を母は後悔するだろうけれど、うちの母はまあまあ気が強い。
一方、そんな母とは違った方面で我の強い私はのらりくらりと答える。

「成輔さんが嫌なのではなく、ええと就職したばかりで結婚は考えられないというのが……普通の感覚かなと。晩婚化が進んでいるのは、女性のキャリア形成上仕方ないことですし、私もこれからもっと勉強を積み、業務に役立てていきたいと思っているわけで……」

なお、これらの理由は両親には何度も話している。結婚は今じゃないと。
今日この場に「顔だけ出してほしい」と連れてきたのは両親だ。しかも、相手が勝手知ったる成輔なら、私だって正直にお断りを口にするというもの。

「ぼそぼそぼそぼそと失礼な言い訳を並べて、あなたって人は」

母が怒りでなんと言おうか迷っているのが、私と父にはわかった。そして、向かいに座る成輔もわかっているようだった。

「葵ちゃん、そういったことも含めて、少し外で話さないか?」

これから食事なのに? まだお茶しか飲んでないのに?
……とはさすがに私も言えなかった。成輔なりに私たち親子の関係に気を遣っているのだろう。

「ハイ」

素直に頷き、私と成輔は連れ立って、料亭に隣接した日本庭園に出たのだった。
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