熱情滾るCEOから一途に執愛されています~大嫌いな御曹司が極上旦那様になりました~
約束の金曜日、定時に上がって、今谷とふたり電車に乗った。中央線で吉祥寺に出る。私の乗換駅がここで、花屋も何件か知っている。

「初夏だし、定番は薔薇なんだけど、ひまわりももう出回ってるね」

大きめの一軒に立ち寄り、飾られた切り花やガラスケースを見て回る。

「食卓に飾る感じにするの?」
「そう。あとはミニブーケを本人にあげたいってうちの母親が」
「OK。匂いの強いすぎるものは避けて、装花の定番で。かすみ草とラナンキュラスとかどうかな」

今谷が近くにあるかすみ草の束を見てうーんという顔になる。

「地味すぎないか? かすみ草」
「ほら、こっちもかすみ草。種類があって形も違う。さらに染料を吸わせてカラーバリエも出せるから、組み合わせると可愛いよ。ミニブーケはひまわりをメインに作ってもらうのはどうかな。テーブルの花と印象が違った方がいいでしょ」

早口で伝えてしまった。案の定、今谷は少々気圧された顔をしている。

「ごめん。いっぺんに喋ってしまった」
「いや、普段の院田、あんまり喋ってくれないから嬉しいかも。好きなジャンルの話なら話してくれるんだな」

そう言って笑顔になる今谷。なんだかむずがゆい反応だ。

「好き、というか。まあ、仕事ですんで。あと一応、そういう家の生まれだってだけで」
< 72 / 207 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop