妖帝と結ぶは最愛の契り
序
切燈台に灯された小さな火が揺らめき、文机に置かれた紙屋紙に映る火の灯りもゆらりと乱れる。
書き物に集中していた弧月は頬にかかる白金色の長い髪を押さえ顔を上げた。
(風は吹いていないと思ったが……?)
見ると、燈盞の油の中に焦げた羽虫が浮かんでいる。
どうやら灯りに釣られ火に入ってしまったようだ。
(自ら火に入るとは……憐れな)
小さな命が絶えたことに僅かながら哀しみを覚えた。
夏にはよくある光景だというのに、何故か今日は感傷的になってしまっているらしい。
集中力が途切れ、蒸し暑さを思い出し自嘲気味に笑う。
夏虫さえも寝静まったかのように静かな夜だったため、暑さも忘れ集中していたようだ。
気付けばじっとりと汗をかき、衣が肌に張り付いている。その不快さに細く弧を描いた眉をハの字に変えた。
じわりと額に浮かぶ汗を手の甲で拭うと、弧月は火よりも赤い紅玉色の瞳に灯火を映す。
ゆらゆらと惑わすように揺れる灯火は、まるで何かの予兆を知らせているかのようだ。
……何故か、胸の奥が騒めく。
ちりちりと焦がされている様な、焦燥に似た感覚。
その焦りの正体を探ろうと、自身の内面に没入した。
書き物に集中していた弧月は頬にかかる白金色の長い髪を押さえ顔を上げた。
(風は吹いていないと思ったが……?)
見ると、燈盞の油の中に焦げた羽虫が浮かんでいる。
どうやら灯りに釣られ火に入ってしまったようだ。
(自ら火に入るとは……憐れな)
小さな命が絶えたことに僅かながら哀しみを覚えた。
夏にはよくある光景だというのに、何故か今日は感傷的になってしまっているらしい。
集中力が途切れ、蒸し暑さを思い出し自嘲気味に笑う。
夏虫さえも寝静まったかのように静かな夜だったため、暑さも忘れ集中していたようだ。
気付けばじっとりと汗をかき、衣が肌に張り付いている。その不快さに細く弧を描いた眉をハの字に変えた。
じわりと額に浮かぶ汗を手の甲で拭うと、弧月は火よりも赤い紅玉色の瞳に灯火を映す。
ゆらゆらと惑わすように揺れる灯火は、まるで何かの予兆を知らせているかのようだ。
……何故か、胸の奥が騒めく。
ちりちりと焦がされている様な、焦燥に似た感覚。
その焦りの正体を探ろうと、自身の内面に没入した。
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