妖帝と結ぶは最愛の契り
 人の身で人ならざる力を持っているという事は人間の目から見るとかなり異端に見えるらしい。
 元々は別の国で暮らしていたという両親から見れば尚更だったのだろう。

 その上春音が生まれてからは両親の愛情は彼女にばかり注がれ、美鶴はないがしろにされるようになった。
 春音が物心つく頃には、美鶴はもう家族の一員ではなくなっていたのだ。

 一体自分が何をしたのだろう?
 ただ、異能を持って生まれてきたというだけなのに。

 異能さえなければ、と何度呪ったことだろう。
 何故この国に生まれてしまったのかと、何度思っただろう。
 周りに味方はおらず、ただ生きているだけ。
 両親に仕事を言いつけられることで、少しは役に立てているのだと思えた。
 少なくとも、生きていていいのだと思えた……。
 その程度のことが救いになってしまっていた時点で、美鶴は愛されること自体を諦めていた。

 愛してもらおうと努力したこともあっただろうか?
 泣いてばかりいた記憶しかないので、もうそれすらも忘れてしまった。
 本当に、生きることを許されているから生きているだけ。
 人々が語る生きる意味など、美鶴には夢のようなものだった。

 だが、何もかもが今はどうでも良い。
 あと少しで全てが終わるのだから。

(予知を視たのは三日前。七日以内にはいつも必ず起こるから……私の命も長くてあと四日)

 美鶴は、自分の死を予知していた。
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