妖帝と結ぶは最愛の契り
「もちろん多くの姫などいらぬと突っぱねた。そうすると、今度は藤峰が妥協案を出して来たのだ」
「妥協案、ですか?」
「ああ……まず美鶴を弘徽殿へ移動させることに文句は言わぬから、莢子の入内を受け入れるようにと。そして一年経っても子ができぬならば内裏から下がらせるとな」

 そうすれば美鶴が身籠ったのは奇跡に近いことで、他の姫ではやはり無理なのだという証明にもなる。
 例えお手付きにならなかった場合でも、弧月が本当に美鶴しか見ておらず他の姫が入り込む余地はないのだと知ることが出来る、と。
 他の臣下達も左大臣である藤峰の意見に賛同し、無理だと分かったならばもう弧月の後宮のことには口出ししないと約束したのだそうだ。

「元より俺を良く思わない臣下もいたからな。今後も事あるごとに余計な手出しをされても困る。美鶴や子に関わろうとする輩も出てくるかもしれぬしな」

 だから今のうちに黙らせる方法を取ったのだという。

「そう、だったのですか……」

 結局のところ、弧月が臣下に言われるまま莢子の入内を決めたのは自分と腹の子の為だったのだ。
 どこまでも自分たちのことを案じてくれる弧月をただただ愛しいと思った。

「……分かりました。そういうことであれば、私もその方のいる一年を気を強く持って過ごします」

 多少なりとも嫉妬はしてしまうかもしれないが、弧月のことは信じている。
 たった一年耐えればいいだけだ。
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