妖帝と結ぶは最愛の契り
「すまぬな……」

 すでに納得し切り替えた美鶴だったが、弧月はまだ少し申し訳なさそうにしている。

「お気になさらないでください。弧月様が私と子を案じて決めたことだと理解いたしましたから」
「ああ、だが……」

 大丈夫だと伝えても気に病む様子の弧月。
 罪悪感を覚えている様な弧月にどうすればいいのかと悩んだ美鶴は、彼に一つ望んでいたことを思い出した。

「それほど気に病むのであれば、一つ私の望みを叶えてくださいまし」
「望み? 美鶴がそのようなことを言うのは珍しいな」

 弧月は驚くが、その望みとは以前にも伝えていたものだ。

「前にも頼んだではございませんか。弧月様の耳としっぽを触らせて下さいと」
「ああ、あれか……」

 思い出した弧月は、しかし少々困り顔になる。

「見せてもいいが、本来の姿は妖力が漏れやすい。抑える方に気力を使うから、あまり強く触らないでくれ」
「そうなのですか? あ、お嫌でしたら無理には……」
「よい。以前にも二人だけのときならば問題ないと言ったであろう?」

 今は丁度二人きりだからな、と微笑んだ弧月は美鶴から少し離れ軽く目を伏せた。
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