妖帝と結ぶは最愛の契り
 暗い中でも見える白磁(はくじ)の肌には紅玉の美しい赤が映える。
 その赤い色彩が見えなくなったと思ったら、次の瞬間ほのかに光りを放つ白金の毛並みが現れた。

 頭には髪と同じ色の狐耳がぴんっと立つようにあり、尾は三本あるのか双子に比べて分量が多い。
 絹糸の様な毛並みは触り心地が良いだろうと見ただけで分かった。

「……どうだ?」

 少し控えめに聞いて来る弧月は、美鶴が妖狐の姿を見て(おそ)れるとでも思ったのだろうか。
 だが美鶴は弧月の心配をよそに頬を朱に染め目を輝かせていた。

「素晴らしいです! とても綺麗で……あの、本当に触ってもよろしいのですか?」
「ああ、構わぬ」

 ふっと笑い許した弧月のしっぽに、美鶴は恐る恐る触れる。
 上質な絹織物に初めて触れたときの様な緊張があった。

「あ……」

 触れると、思ったより軽くふわりとした感触がある。
 そのまま沈めると、白金の毛並みは美鶴の手を包み込んだ。
 思った以上の柔らかさに美鶴は感動を覚え心が震えた。

「柔らかいです……」
「そうか……期待に応えられたのなら良かった。……だが、あまりにもゆっくり触られると少々くすぐったいな」
「あ、すみません」

 実際くすぐったそうに笑う弧月に、つい手を引っ込めてしまう。
 だが、見上げた顔には愛し気な笑みしか浮かべられておらず、美鶴はもう少しと欲を出した。
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