妖帝と結ぶは最愛の契り
「あの、お耳も触れてよろしいですか?」
「よいが、くすぐるなよ?」

 からかうように注意されたが、よいと言われたので手を伸ばし三角の耳に指先で触れる。
 柔らかい毛並みがあるせいか、人の耳よりも固くは感じない。
 温かく触り心地の良い耳をしばらく触っていると、不意打ちのように唇に柔らかいものが触れた。

「っ⁉」
「耳はそれくらいにしてくれ。欲情してしまう」
「よっ⁉ も、申し訳ありません」

 口づけと直接的な言葉に驚き腕を下げる。
 自分を見る弧月の眼差しに色気を感じ、どきどきと鼓動が早まった。

「すまぬ、少々からかい過ぎたか?」
「か、からかったのですか⁉」

 羞恥と驚きでつい大きな声を出してしまいさらに恥ずかしい。
 だが、交わった視線からは変わらぬ甘さを感じた。

「直接的な言葉を使ってしまったのはそうだな……」

 だが、と続けた弧月は美鶴の肩を抱き引き寄せる。
 広く引き締まった胸に抱き込まれ、美鶴はまたしても鼓動が駆け足になるのを止められなかった。
 弧月の唇が耳元に寄せられ、直接声を届けられる。

「耳は触られるとむずがゆいだろう?……そうは思わぬか?」

 甘さと色気が込められた声が耳に届き、同時に熱い吐息も耳にかかる。
 ぞわりと甘い痺れを感じ、美鶴は恥じらいとは別の意味で体が熱くなっていくのを感じた。
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