妖帝と結ぶは最愛の契り
「お、思いますっ……なのでそのっ」

 答えながら美鶴は混乱する。
 弧月は優しく甘い雰囲気で接してくることはあっても、これほどまでに色気を出してくることはなかった。
 ……いや、はじめての夜にはかなりの色気があったが。

 それでも懐妊してからは愛し慈しむといった様子の弧月だったのに……。

(こっ、これはもしかして、まだからかわれているのかしら?)

 このように迫って自分の反応を楽しんでいるのだろうかと疑いたくなる。

「ま、まだ私をからかっていらっしゃるのですか?」
「……まあ、半分は」

 苦笑気味に告げた声は、そのままいつもの優しい声音に戻る。

「だが半分は本気だ。……とはいえ、もう休むとしよう」

 そう言うと、弧月は抱いた美鶴の体を横たえ褥に寝かせた。
 触り足りないだろうと言ってふさふさのしっぽも抱かせ、優しく髪を撫でてくれる。
 からかわれたことには少し文句を言いたいのに、その優しさとしっぽの柔らかさ。そして何より安心させてくれる手に睡気が訪れる。

「おやすみ、美鶴」
「おやすみ、なさいませ……弧月様……」

 言うが早いか、すぐに美鶴の瞼は下りていく。

 莢子の入内に関しては心配が残る。
 だが今は、安寧に身を任せ安らかに眠りに落ちた。
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