妖帝と結ぶは最愛の契り
「まったく、手間をかけさせる」

 重くため息を吐いた碧雲は、美鶴の顎を掴む手にさらに力を込める。

「ぐぅっ」

 顎骨を締められ、閉じていられなくなった美鶴の口にはすぐに薬が流し込まれてしまった。
 飲みこまぬようにと吐き出そうとするが、今度は鼻も含めて大きな手のひらで口を塞がれてしまう。
 息も出来ぬ状態。
 飲みこまずにいることは無理だった。

 ごくり

 苦し気に呻く美鶴の喉が動く。
 嚥下したのを確認した碧雲は笑みを浮かべた。

「飲んだか。ふむ、念のためもう少し飲ませておくか?」
「止めなさい!」

 一先ず美鶴が堕胎薬を飲みこんだことで気が緩んだのだろう。
 小夜の叫びと共に放たれた風の刃に碧雲は反応するのが遅れた。

 ひゅっと風の切る音がしたと思うと、碧雲が持っていた竹筒が真ん中から真っ二つに割れる。
 中に残っていた薬が落ち、(しとね)に染み込んでいった。

「ちっ、まあいい。少しでも飲んだのなら効果はあるだろう」

 少々不服そうにしながらも目的は果たしたと碧雲は美鶴の拘束を解く。
 その隙を突くように、美鶴の手から(・・・・・・)青い炎が出現し碧雲を襲った。
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